【世界陸上】やり投げ・北口榛花 最終6投目で大逆転金メダル「世界で一番幸せ」

2023年08月27日 04:45

陸上

【世界陸上】やり投げ・北口榛花 最終6投目で大逆転金メダル「世界で一番幸せ」
日の丸を背に、歓喜の表情を見せる北口榛花(ロイター)
 【陸上・世界選手権第7日 ( 2023年8月25日    ハンガリー・ブタベスト )】 歴史的偉業だ。女子やり投げ決勝では、昨年銅メダルで日本記録保持者の北口榛花(25=JAL)が66メートル73の好記録をマークし、4位からの大逆転優勝を飾った。得意とする最終6投目で記録を伸ばし、日本女子ではマラソンを制した93年の浅利純子、97年の鈴木博美以来3人目、トラック&フィールド種目では初の金メダルの快挙を達成した。日本陸連の基準を満たして陸上第1号となるパリ五輪代表も決め、夏の主役へ一気に躍り出た。
 全神経を右腕に集中させた。6投目。北口は会場に手拍子を求め、走り出す。大歓声とともにドナウの川風に乗ったやりは、高い放物線を描き、優勝ラインを一気に越えた。セカンドベストの大記録66メートル73で、一気に表彰台の頂点へ。「今日だけは、本当に世界で一番幸せ。うれしすぎて体が軽い。3センチくらい浮いてるんじゃないかなと思うくらいフワフワしている」。日の丸の大旗にくるまれた25歳は喜んだ。

 61メートル78の1投目に右ふくらはぎをつるアクシデントに見舞われた。3投目に63メートル00で2位に上がったが、最終投てき直前に4位に転落。メダル圏からはじき出された。「自分は最終投てきに強いとずっと言われてきた。本当に自分は強いんだぞ、というところを見せたかった」。昨年も5位から銅メダルまで逆転したラスト1投で、底力を発揮した。

 今季世界最高の67メートル04を出し、世界ランク1位として臨んだ大舞台。追われる立場として迎える決戦前は、緊張で震えていた。前日は昼寝すると、心臓の音がバクバクと聞こえてきた。「今までの世界選手権とは違うものを感じた」。それでも、競技場に入ると重圧は消えた。「知っている人の顔がいっぱいあった。凄く安心した」。セケラク・コーチや家族、多くの存在が緊張を和らげてくれた。

 今季も激動だった。オフの走り込みでスピードアップした助走が、技術とかみ合わない。6月の日本選手権では2位で大号泣。その後は拠点のチェコで立て直しを図った。ウエートトレーニングを7割に抑え、自らの武器である肩の柔らかさを生かすようマッサージを入念に行って姿勢矯正。スタート位置がずれるために禁止されていた助走前の足踏みのルーティンも復活をコーチに直訴し、今回の大躍進につなげた。

 高校でやり投げと出合い、世界ユース選手権で優勝してから8年。五輪を含め、投てきの日本女子では初の世界一となった。「ユースで世界で1番になってから、本当に自分が世界で1番になれると信じてやってきた。この競技を選んで良かった」。

 来夏の五輪切符も陸上日本勢最速で獲得し、花の都パリへの道筋がくっきりと描かれた。「トップで居続けることは簡単ではないが、できる限りトップでいられるように努力し続けたい」。あと1年。世界女王として新たな挑戦が始まる。

◇北口 榛花(きたぐち はるな)
 ☆生まれとサイズ 1998年(平10)3月16日生まれ、北海道旭川市出身の25歳。1メートル79、86キロ。

 ☆経歴 北海道教大旭川中―旭川東高―日大。20年にアスリート社員としてJAL入社。

 ☆名前の由来 パティシエの父・幸平さんが、ヘーゼルナッツが採れる落葉低木の榛(はしばみ)から採用。日本陸連には「榛花」を「棒花」と表記ミスされる悲しい?過去も。

 ☆競技歴 3歳で水泳を始め、小1で始めたバドミントンでは小6時に団体戦で全国優勝。水泳に専念する予定だった旭川東高で陸上部顧問の松橋昌巳先生に誘われ、陸上を始める。

 ☆実績 高3時に15年世界ユース選手権優勝。19年に2度の日本新記録をマーク。21年東京五輪は決勝進出も12位。最高峰のダイヤモンドリーグ(DL)通算4勝。昨年DLファイナル銅メダル。

 ☆スイーツ好き 競技の合間にカステラなどで栄養補給することも。思い出の味「榛のエクレア」「北口家の昔ながらのカスタードプリン」は幸平さんが勤めるアートホテル旭川で販売。家族は今回、現地観戦。

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