【甲子園酷暑対策】元NPB審判員・柳内記者 複数ユニ&飲水機会増加を

2023年08月16日 05:00

野球

【甲子園酷暑対策】元NPB審判員・柳内記者 複数ユニ&飲水機会増加を
今大会から実施されているクーリングタイム Photo By スポニチ
 毎年のように暑さ対策の必要性が叫ばれる高校野球の夏の甲子園大会。今夏は5回終了時に水分補給などを行う10分間の「クーリングタイム」が設けられた。旬の話題に鋭く斬り込む企画「マイ・オピニオン」で本紙アマチュア野球担当キャップの柳内遼平記者(32)が、球児たちの未来を見据え持論を語った。
 暑さ対策は私に任せろ、と言いたい。記者は11年から16年までNPB審判員を務めた経験がある。プロテクターを着けて炎天下で数え切れないほど球審を務め、5時間超の試合も経験。攻撃時はベンチで休める選手がうらやましかった。NPB審判員は1年契約で「倒れる=クビ」と認識していたので暑さ対策は職を失わないための生命線だ。有効だった2つの暑さ対策を球児たちにオススメする。

 1.着替え 球審を担当する日は少なくとも2着のユニホームを持参した。服が汗を吸えなくなると体感湿度は上昇し、吐き気をもよおす。そうすると水分も取りづらくなり熱中症へ一直線だ。5回終了時の整備時間では必ず着替えた。花巻東・佐々木洋監督も初戦の試合後に「(クーリングタイムは)濡れたユニホームを着た状態で冷えた風を浴びるので、体が冷えてだるくなる」と語っていた。現状はアンダーシャツは交換できても背番号が縫い付けられたユニホームは交換できない。背番号をマジックテープなどで着脱可能とし、複数のユニホームを準備するなどの対策が考えられる。

 2.水分補給 夏の時季は攻守交代時に少しずつ水分補給した。一度に、大量に飲むと吐き気につながり「フォーメーション」といわれる一塁や三塁に走って判定をカバーする動きができなくなる。選手ももっと水分補給の機会が増えるべき。サッカーではコートの外に飲料水が多く置かれ、プレーが途切れた際などに選手が水分補給する。三塁打を打った選手が「タイム」を取ってベースコーチから飲料水を受け取る。こんな光景があってもいい。

 毎年、この時季に球児を心配する声が上がる。ただ野球に限らず強豪校は炎天下で試合以上に過酷な長時間の練習を行う。甲子園は京セラドームで開催できるかもしれないが、普段の練習はドームでできない。甲子園だけを見て短絡的に「危ない」と叫ぶのは違和感を覚えるし、それなら練習にもメスを入れる必要が生じると思う。

 ≪年々気温上昇≫気象庁の発表によると甲子園球場のある兵庫県の平均気温は観測開始の1897年8月は27.7度で約100年後の00年は29.1度。ただ、そこから温暖化傾向がさらに強くなり、今年8月(15日現在)は30.6度だ。最高気温は帝京・前田監督が甲子園で初優勝した89年8月は30.8度だったが、昨年8月は32.3度で今年8月(15日現在)は34.9度を観測した。

 ≪大半がクーリングタイム肯定的も…≫大半のチームがクーリングタイムに肯定的な反応を示しているが、対応には苦慮している。開幕した6日は変調を来す選手が続出。涼しい場所から一気に炎天下に出たことで聖光学院(福島)は4人が脚をつり、力投していた先発・小室朱生(3年)は6回にふくらはぎ、太腿裏のけいれんで降板した。高知中央は履正社(大阪)との2回戦で6回に2得点。太田弘昭監督は「6回から変わる。投手(の球)が浮いてしまったり」と振り返り、履正社の多田晃監督は「(投手の)体が冷え切ってしまった」と難しさに言及した。

 ≪6回平均得点は昨年とほぼ同じ≫今夏出場校の監督がクーリングタイム導入で「流れが変わりやすい」と口をそろえた6回表、裏の1試合平均得点は、ここまで1.18で、1.21だった昨年とほぼ同じ。また同タイムも含める1試合平均時間は昨年よりも5分長くなり、2時間21分となっている。

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