【内田雅也の追球】「ホットドッグ」の功罪 期待抱かせた9回 アダになった8回 原点を思い返したい

2023年08月16日 08:00

野球

【内田雅也の追球】「ホットドッグ」の功罪 期待抱かせた9回 アダになった8回 原点を思い返したい
<広・神>初回1死三塁、先制の2点本塁打を放ち、笑顔でポーズを決める森下(撮影・北條 貴史) Photo By スポニチ
 【セ・リーグ   阪神6-7広島 ( 2023年8月15日    マツダ )】 9回表、1点差に迫り、森下翔太の打席が回ると「もしや」と思わせた。2死一塁。長打同点、一発逆転。そんな期待を抱かせる打者である。
 この夜すでに4安打を放っていた。もちろんいい意味で書くのだが、このルーキーは「目立ちたがり屋」である。

 初回に放った5号は先制2ラン。過去4本も▽1号=先制ソロ▽2号=同点2ラン▽3号=勝ち越し2ラン▽4号=突き放す2ラン……と目立つ一発だった。

 1本出れば、2本目、3本目……と出るのも特徴だ。同点に追いつかれた後の3回表1死二、三塁。左翼線に放った勝ち越しの2点二塁打は本塁打と同じ内角速球。大瀬良大地がやり返そうと、同じ球できたのを返り討ちにした格好だった。

 出場は57試合と約半分で試合前まで打率2割2分台だが、お立ち台に立ったのは8回。佐藤輝明と並びチーム最多だ。

 こうした目立ちたがり屋を大リーグでは「ホットドッグ」と呼ぶ。勝負強く、劇的な一発をよく放ったレジー・ジャクソン(ヤンキースなど)は「あれだけのホットドッグに塗るマスタードは世界中から集めても足りない」と言われた。プレーオフやワールドシリーズなどが行われる10月に強く「ミスター・オクトーバー」と呼ばれた。

 森下は最後、空振り三振に倒れ、チームは敗れた。マジック点灯は目前で「アレ」に向けて、胸突き八丁の戦いが続く。重圧を感じる試合も増えてくる。しびれるような試合もあるだろう。そんな時、頼りになるのはホットドッグである。

 ただし「自分で決めてやる」というホットドッグらしさがアダになることもある。

 この夜、2点を追う8回表、無死二、三塁。佐藤輝は空振り三振に倒れた。二遊間は深く守り、「1点OK」の守備隊形だった。ここは軽打でつなぐことを考え、二遊間にゴロを転がせば、1点差に迫って、なお1死三塁。外飛(犠飛)でも同点の好機が続く。強振でのファウル、空振りはいただけなかった。

 逆転された6回裏も馬場皐輔が連続四球で出した走者がともに還った。ちょうど大粒の雨が降り、連続四球後に中断。確かに不運ではあった。

 四球は点になる。攻撃陣はリーグ最多、投手陣は同最少。今季の快進撃を支えてきた原点を思い返したい。 =敬称略=
 (編集委員)

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