ヤンキース60勝64敗も打つ手なし、1992年以来、31年ぶりの負け越しシーズンの危機

2023年08月22日 13:09

野球

ヤンキース60勝64敗も打つ手なし、1992年以来、31年ぶりの負け越しシーズンの危機
ヤンキースのジャッジ(AP) Photo By AP
 名門ヤンキースが8連敗中でシーズン60勝64敗。打つ手もなく、1992年以来、31年ぶりの負け越しシーズンの危機に瀕している。
 アーロン・ジャッジ、ゲリット・コールと、投打にリーグを代表する選手を抱えながら、打線はチームOPS(出塁率+長打率)が・705の22位、投手陣は防御率4・11で14位である。勝てなくなったのは6月3日のドジャース戦でジャッジが踵(かかと)をケガし、長期離脱を強いられたあたりから。直近の14シリーズで勝ち越したのは1度だけ。打てないし守れないし、負けるべくして負けている。

 スポーツイラストレイテッド誌のトム・ベデューチ記者は今季からの新ルール導入で野球が変わったのに、ヤ軍のチーム構成は変っていないと指摘する。

 平均のスプリントスピードで比較すると、メッツ、ホワイトソックス、ヤ軍は最も遅い3球団で、揃って負け越している。打撃はベテランに頼り、これまで通りボールをよく見て、四球を選び、本塁打で勝とうとしている。だが17年のナ・リーグMVP、ジアンカルロ・スタントンは打率・199で三振が多い。両リーグで首位打者に輝いたDJ・ラメーヒューも今季は・240で、出塁率も・315と低い。若手も伸びない。新人王にと期待されたアンソニー・ボルピ遊撃手は、守備と走塁は良いが、低目の直球しか打てず、打率・217、出塁率・293である。オスワルド・ぺラザ内野手、オズワルド・カブレラ外野手も伸び悩んでいる。ベデューチ記者はなぜヤ軍は左の強打者を獲得してこなかったのかと指摘している。17年のオフ、ヤ軍は大谷翔平が来てくれないとわかると、右の強打者スタントンをトレードで獲得した。だがケガが多いし、変化球に弱い。移籍後MVP投票の対象になったのは18年だけで、その時も19位だった。

 ベデューチ記者はヤ軍は18年のオフに、ブライス・ハーパーを獲得しておくべきだったと指摘する。言うまでもなく、ベーブ・ルースの建てた家「ヤンキースタジアム」は左のパワーヒッターに最もフィットする球場なのである。投手陣もブルペンは防御率3・20で30球団中トップなのだが、先発投手陣は4・81で24位。エースのコールは160・1イニングを投げ、防御率3・03とサイヤング賞候補なのだが、他がひどい。カルロス・ロドンはケガが続き、いまだに登板試合数は6試合で防御率7・33。ネストル・コルテスもケガで5月以降は1試合の登板のみ。ドミンゴ・ヘルマンは6月末に完全試合を達成したが、7月は勝ち星ゼロで、今月アルコール依存症の治療でチームを離脱した。ヤ軍はベテラン選手が多いから、どうしてもケガで離脱する選手も多くなる。ここまで総年俸の32%にあたる6800万ドルを無駄にしている。

 もっとも30シーズン連続、93年から22年まで勝ち越しを続けてきたこと自体は大変な偉業だ。しかしながらこのチームは世界一27度の名門で球界の盟主。常に頂点を目指さねばならない。09年の世界一以降、ヤ軍は5度ア・リーグ優勝決定シリーズに進出しながら、全て敗れている。どうすればいち早く世界一を奪還できるか、その答えを出すのはとても難しい。左のパワーヒッターについては、このオフのFA市場に大谷、コディ・ベリンジャーが出てくるが、今季のチームのサラリー総額は既に2億7500万ドル。果たして彼らの獲得に必要な大型契約をオファーできるのか?ファームの人材にも欠ける。直近の若手有望株ランキングでは30球団中21位で、トップ75に誰も入っていなかった。そもそも2013年以降のドラフトで大スターになったのはジャッジだけである。就任26年目、56歳のブライアン・キャッシュマンGMは、野球史に残る偉大な編成本部長であることは確かだが、今、難しい状況に立たされている。

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