センバツ出場の中央学院「140キロトリオ」を元審判員記者がジャッジ! 三位一体で甲子園初勝利狙う

2024年03月13日 05:45

野球

センバツ出場の中央学院「140キロトリオ」を元審判員記者がジャッジ! 三位一体で甲子園初勝利狙う
ポーズを決める(左から)柳内記者、中央学院・蔵並、颯佐、臼井(撮影・木村 揚輔) Photo By スポニチ
 11年から6年間、NPB審判員を務めた柳内遼平記者(33)が、フル装備で選手の成長や魅力をジャッジする「突撃!スポニチアンパイア」。第11回は18日に開幕する「第96回選抜高校野球大会」に関東・東京の6校目の“滑り込み”で出場する中央学院(千葉)の「140キロトリオ」だ。148キロ右腕の颯佐心汰(さっさ・ここた)、ともに142キロ右腕の蔵並龍之介、臼井夕馬(いずれも3年)が三位一体で同校の甲子園初勝利を狙う。
 1月26日に行われた選抜出場校を決める選考委員会。中央学院は関東・東京の6校目を桐光学園(神奈川)などと争い、出場が決まった。当日、記者は“滑り込み選出”にもかかわらず、翌日紙面用の出場校一覧表では最も低い評価のCではなくBをつけた。蔵並、臼井、颯佐の「140キロトリオ」がいるからだ。

 選抜開幕を見据えて練習にも熱が入る今月5日に「トリオがブルペンで投球練習を行う」との情報をキャッチ。同部の福嶋翔平部長に「ダメ元」で当企画を打診すると、答えはOKだった。

 暖かい日が続いていたが、その日は冷え込んだ。まずは1メートル87の大型右腕・蔵並が白い息を吐きながら一番乗りでブルペンに来て「身長が高いので角度に自信がある」と宣言。「プレー!」をかけると迷いのない速いテンポで投げ込んできた。左足が着地してから、しなる腕。他の投手よりも一段高いところから投げ下ろす角度。まるで外国人投手だ。リリースが決まった時の球威は「プロ入り」の可能性を感じさせる。「まだ100%じゃない。全球、アジャストしたい」と聖地での覚醒を誓っていた。

 次はサイド気味から投じる変則右腕の臼井。知名度は決して高くない1メートル73の右腕。「高校生は短期間で急成長する」というが、彼がまさにそれ。スピンの利いた直球は、球審目線からだと重力に逆らうようにホップしているように見えた。特筆すべきはサイド気味にもかかわらずシュート回転しない点。「無重力ストレート」でミットを高く鳴らすので、こちらも負けずに「ストライク!」も音量アップだ。投げ終えた臼井は「この選抜から2段モーションがOKになったので試したらハマった」と急成長の理由を明かした。

 最後は二刀流右腕の颯佐。50メートル走5秒8、遠投120メートルの“フィジカルモンスター”だが、マウンドに立つと繊細な投手に一変する。力感なく腕を振り、カーブ、スライダー、直球をコーナーに投げ分ける。一番の驚きは落ちないチェンジアップ。腕を強く振るため、打者は“ストレートが来た”と思って振ろうとしてもなかなかボールが来ない。そして落ちないから変化球と見破られない。「直球とチェンジアップだけで十分」と思えるほどの宝刀だった。

 3人とも甲子園出場校のエース格でもおかしくない好投手。仮に3イニングずつフル動員となれば相手は1、2打席で初対決の投手を攻略する必要も生じる。チームは大会第3日、20日の第3試合で耐久(和歌山)と対戦予定。滑り込みから下克上へ――。可能性はある。(柳内 遼平)

 ◇蔵並 龍之介(くらなみ・りゅうのすけ)2006年(平18)5月21日生まれ、東京都足立区出身の17歳。興本小3年で野球を始め、駿台学園中では軟式野球部に所属。憧れの選手はロッテ・佐々木。1メートル87、90キロ。右投げ右打ち。

 ◇臼井 夕馬(うすい・ゆうま)2006年(平18)4月5日生まれ、千葉県市原市出身の17歳。石塚小1年から野球を始め、八幡中では市原シニアに所属。憧れの選手はドジャース・大谷。1メートル73、75キロ。右投げ右打ち。

 ◇颯佐 心汰(さっさ・ここた)2006年(平18)10月18日生まれ、千葉県船橋市出身の17歳。高根台三小2年から野球を始め、高根台中では船橋シニアに所属。憧れの選手はフィリーズ・トレー・ターナー。1メートル75、72キロ。右投げ右打ち。

 ≪近年のトレンド 継投で上位狙う≫近年の甲子園では継投が上位進出の鍵となる。昨春は山梨学院の右腕・林謙吾が6勝を挙げる活躍で優勝に導いたが、22年夏は「140キロクインテット」による継投で仙台育英(宮城)が東北勢初優勝。昨夏は慶応(神奈川)が背番号10の左腕・鈴木佳門を決勝の先発マウンドに送り、5回からエース右腕・小宅雅己が最後まで投げ、仙台育英との「継投対決」を制した。中央学院もトレンドの継投で上位進出を狙う。

 ≪ノムさん“弟子”相馬監督の教え浸透≫【取材後記】社会人野球のシダックスで野村克也監督から指導を受けた相馬幸樹監督。部員には「“なぜ?”と言われた時に理由を説明できる取り組みをすること」を求めている。選手はおしゃれな髪形が多く、ウオーミングアップの際にはBGMを流してダンスで体を温め、マネジャーは部の公式サイトで、情報を発信する。部員たちは「高校野球らしくないスタイル」の一つ一つに理由を持っている。

 自身の役割を「気づきを与えること」と語る指揮官。今回の企画でも象徴する場面があった。3投手は自主的に一番の決め球を投げなかった。各自が甲子園初勝利のために必要なことに気づいていたのだ。それでも投手としての魅力を示した3投手。“隠し球”は甲子園で披露されるだろう。(アマチュア野球担当キャップ・柳内 遼平)

 ◇柳内 遼平(やなぎうち・りょうへい)1990年(平2)9月20日生まれ、福岡県出身の33歳。光陵(福岡)では外野手。四国IL審判員を経て11~16年にNPB審判員。2軍戦では毎年100試合以上に出場、1軍初出場は15年9月28日のオリックス―楽天戦(京セラドーム)。16年限りで退職し、公務員を経て20年スポニチ入社。同年途中からアマチュア野球担当。

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