こだわり旬の旅
【山梨・北杜】新感覚のスパークリング日本酒は300年の歴史から生まれた…「七賢」蔵元を訪ねて
2023年07月04日 16:00
社会
日本名水百選に選ばれた南アルプス・甲斐駒ケ岳の伏流水と、地元農家による契約栽培米を使用した銘酒「七賢」の蔵元で、1835年(同天保6年)に建てられた母屋は堂々として風格があり、周囲を圧倒。12代にわたり蔵を継承してきた北原家が、40年前まで住んでいたそうで、随所にぬくもりが感じられる。
奥座敷は、1880年(明治13年)に明治天皇が山梨を巡幸した際、宿泊所「行在所(あんざいしょ)」に指定された場所で、一般公開中。工場見学は行在所見学に変わった、江戸から明治にかけての格式が色濃く残るお座敷で、欄間には七賢の由来にもなった、高藤藩(信州)内藤駿河守より拝領した「竹林の七賢人」の透かし彫り。米の貯蔵庫だった蔵を改装した「伝奏蔵」も公開中で、こちらでは明治天皇ゆかりの品を展示。数々の貴重な遺産に重厚かつ厳かな気分に包まれた。
そんな歴史ある蔵元が「乾杯にふさわしい、世界に誇れる日本の酒を」と、5年かけて開発したのがスパークリング日本酒。2015年の七賢スパークリング「山ノ霞」を皮切りに、近くのサントリー白州蒸留所のウイスキー樽に七賢を寝かせた「杜ノ奏」や、史上最年少で3つ星を獲得した仏人シェフとコラボした「アラン・デュカス スパークリングサケ」など6種類を発売。すべて1度発酵した日本酒を瓶内で再度発酵させる瓶内2次発酵によるもので、ショップ「酒処大中屋」で販売している。カウンターの試飲コーナーで山ノ霞を飲んでみたが、麹の甘みとまろやかな酸味、フルーティーな香りが相まって、さわやかなのどごし。泡が美しく、とても飲みやすい。
「日本酒を飲まなくなった日本人に七賢スパークリングで日本酒のおいしさを知ってほしい」と行在所案内役の秋山さん。今ではレジェンドの蔵元が中心になってスパークリング日本酒を醸造する全国28の蔵元によるawa酒協会も誕生。現在、日本酒の国内消費は苦戦中だが、新たな動きはそれと無縁ではないのかもしれない。
▽行かれる方へ JR中央線長坂駅からタクシーで約10分。車は中央道須玉ICから約15分。行在所見学、伝奏蔵見学とも案内付き30分で300円(1日各3回、4回)。試飲は有料(15ミリリットルグラス50~300円)。問い合わせは山梨銘醸=(電)0551(35)2236。