【内田雅也の追球】 目先より足元、その先…勝負はまだ先と踏んでいる岡田監督

2023年06月24日 08:00

野球

【内田雅也の追球】 目先より足元、その先…勝負はまだ先と踏んでいる岡田監督
4回、投手交代を告げる岡田監督(撮影・北條 貴史) Photo By スポニチ
 【セ・リーグ   阪神1ー3DeNA ( 2023年6月23日    横浜 )】 横浜での連敗がいくらに伸びたとか、ゲーム差がいくらに縮まったとか、そんな目先の話をするのが嫌だったのだろう。わかる気がする。
 敗戦後、阪神監督・岡田彰布は「歩きながらでええやんか」と集まっていた記者団に背を向けて歩き出した。これまでどんな時も囲まれて取材に応じていた。恐らく就任後初めての行動だった。

 判定に不満をもらし、「本当は1―1で延長戦よ」と言った。3回裏2死、佐野恵太の4球目ハーフスイング(ボール判定)は空振り三振で、ならば2失点はなかった。「1球で変わる。怖いということよ」と勝負の厳しさを口にした。

 横浜入りの前日、「初戦は負けてもええやんか」と話していた。「明日(23日)、絶対に勝つ必要もないやんか。別に」

 本音だったろう。余裕などではなく、長いシーズン、勝負はまだ先と踏んでいるのだ。

 評論家時代、前回の監督時代、「勝負は9月」が持論だった。まだ梅雨も明けていない今は、まずは足元を固めたい。相手より自分たちが戦える態勢を整えたい。腰をすえてみていた。

 DeNAの前身、大洋と阪神が優勝争いを繰り広げた1962(昭和37)年、監督・小津安二郎が遺作となった映画『秋刀魚(さんま)の味』(62年11月公開)で夏の首位攻防戦を描いている。

 主人公が勤める会社に「大洋対阪神戦を見にきたついでに寄ってみたんだ」と高校時代の同級生が訪ねてくる。会社は大洋本拠地・川崎球場に近かった。「今日がヤマ場なんだよ」と言った。
 同窓会の打ち合わせで結局、球場には行かず、東京・西銀座の小料理店「若松」で一杯やる。店のテレビでナイター中継を観る。ジーン・バッキーが投げている。

 実際にあった試合だ。8月15日、バッキーが投げ、三宅秀史の逆転3ランで阪神が勝っている。

 ただ、実際のヤマ場はまだ先にあった。最終盤まで大洋と争った。9月の直接対決で勝ち越し、阪神が2リーグ制初となる優勝を果たしている。

 この夜は今永昇太の球威に押され、凡飛が目立った。フライアウト12にゴロアウト5、三振10。簡単に打てる投手ではなかった。それでも9回表、大山悠輔の一発で一矢報い、森下翔太も安打して場内の空気を変えた。

 下を向く必要などない。今は目先より足元を見たい。そして先を見すえたい。=敬称略=(編集委員)

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