【内田雅也の追球】失敗を取り返す姿勢 チームとして戦う姿勢が呼んだ「大きかった」1点

2023年08月06日 08:00

野球

【内田雅也の追球】失敗を取り返す姿勢 チームとして戦う姿勢が呼んだ「大きかった」1点
<D・神> 7回2死一、二塁、適時打を放ちガッツポーズを決める森下(撮影・大森 寛明) Photo By スポニチ
 【セ・リーグ   阪神7-3DeNA ( 2023年8月5日    横浜 )】 もう何度も書いてきたことだが、野球は失敗のスポーツである。攻守走すべてのプレーには多くの失敗がついて回る。
 問題はその失敗とどう向き合うかだ。失敗した当人はもちろん、チームとして、どう取り返すかだ。それが団体の力、チーム力になる。

 この日の横浜スタジアムは「キッズ・スターナイト」として試合開始を1時間早め午後5時に設定。多くの少年少女ファンが訪れていた。

 野球は子どもたちにも大切な生き方を教えてくれる。野球まんが『MAJOR』で吾郎が高校時代、緊張してエラーばかりしていた国分に言う。「もっと楽しくやれよ、国分! 誰かがミスしてもみんなで助け合や帳消しにできんだよ、野球ってやつは!」

 この夜の阪神もいくらか失敗があった。痛かったのは6回裏1死で三ゴロを佐藤輝明が一塁に低投した失策である。青柳晃洋は苦しみ、2点を失った。5―0だった試合が5―3と紛れていた。

 直後の7回表も先頭で安打した木浪聖也がけん制で憤死。完全に流れを失う失敗の連続だった。

 だが2死後、連続四死球から森下翔太が中前適時打して見せた。攻められていた内角球をはじき返し、貴重な追加点をもぎ取った。チームとして失敗を取り返したのだ。

 「あの1点が大きかった」と試合後、監督・岡田彰布は3度繰り返した。「2点差だと、この球場はランナー出て一発というのがあるからな。3点差なら……と思っていた」。勝利をほぼ確信できた1点だった。

 岡田もよく「みんなで」という言葉を使う。個人ではなく、チームとして戦う姿勢こそ、勝利への近道だと分かっているのだ。
 この日は「世紀の落球」があった日だった。1973(昭和48)年8月5日の甲子園。阪神は巨人を1点リードし、9回表2死一、三塁。江夏豊は黒江透修を中堅へのライナー性飛球に打ち取った。ところがセンターの池田純一は芝生に足を取られて転倒。走者一掃の逆転三塁打となった。

 このシーズン、阪神は1勝差で巨人に優勝をさらわれたため「世紀の――」と呼ばれるようになった。ただ実際は落球でなく転倒、記録も失策ではなく安打だった。池田はこの後奮起し、江夏登板の試合で2度のサヨナラ本塁打を放っている。

 あらためて失敗を取り返す姿勢を思った。 =敬称略=
 (編集委員)

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