拡散が誹謗中傷の片棒担ぐかも… 情報化社会だからこそ大事なこと

2024年08月17日 08:00

野球

拡散が誹謗中傷の片棒担ぐかも… 情報化社会だからこそ大事なこと
7月31日、阪神ー巨人戦。7回、二盗に失敗した阪神・森下(左)と巨人・泉口が接触 Photo By スポニチ
 情報にあふれている時代になったからこそ、自分の投稿や拡散が単なる「つぶやき」ではなく、誰かにかけている言葉だと思ってほしい。X(旧ツイッター)やインスタグラムなどSNSの発達によって、誰でも情報を発信できるようになった。スポーツ選手や芸能人など、著名人の素顔や日常なども身近に感じられるようになった。その一方で、問題となっているのが、心ない誹謗(ひぼう)中傷だ。
 プロ野球も、選手がその標的にされることが多くある。それも、直接的な罵詈雑言だけでなく、プレー中の動画の1コマを切り取り誤った解釈で拡散され、人格否定までされてしまうこともある。7月31日の阪神―巨人戦で、盗塁を試みた阪神・森下と二塁ベースカバーに入った巨人・泉口が接触。泉口が振り返り、何か言葉を発しているシーンの動画が「にらみつけ文句を言っている」というような趣旨でXに投稿され、200件以上リポストされるなど、瞬く間に拡散された。

 このポストのコメント欄や引用欄では「文句を言っている」という趣旨に賛同する意見が多く見られ、憶測で批判が広まった。だが、日頃から巨人担当として泉口を取材している記者からすると、その意見に違和感しかなかった。当事者である泉口も困惑していた。「ぶつかってしまったので、謝っていただけなんですけど…」。謝罪が真反対の威圧に捉えられ「“ああいうやつだ”みたいに言われてしまうのは悲しいですよね」と言った。

 「嫌なら見なければいい」という人もいるが、泉口は自身のSNSを運用していない。それでも、反響もあり本人の目に届いている。「自分のアカウントがあったら、どんな書き込みされていたか…」と苦笑い。実際にSNSを運用している選手の元へ、DMで直接的に批判が来るという声はよく耳にする。今回のケースは直接送りつけたものではないが、その投稿を臆測だけで解釈し、拡散されてしまったことが事を大きくしてしまった。

 パリ五輪期間中にはJOCが「SNS等での投稿についてのお願い」といった声明も出すほどの事態にもなった。高校野球でも度々、切り抜き動画とともに心ない投稿が拡散されることもある。過激な投稿が伸びると、それに味をしめて投稿する人もいるだろう。

 メディア側も、読まれるからと事実と異なった見出しをつけることはあってはならないと思っている。誰でも情報を発信できる社会だからこそ、その投稿や、別の投稿の拡散が目の前に対象の人がいると考えるべきだと思うし、記者も情報を扱う身として肝に銘じている。(記者コラム・小野寺 大)

おすすめテーマ

2024年08月17日のニュース

特集

野球のランキング

【楽天】オススメアイテム