【王将戦】藤井王将 後手番でも白星!20期連続獲得の新記録へ好発進
2024年01月09日 05:10
芸能
「駒がぶつかって勝負どころです」。藤井が表情を引き締める。84手目△8七とに18分考慮して残り8分となり、秒読みへ突入。対する菅井は80分あったが、突き抜けた終盤力に狂いはなかった。
102手目△7四金で飛車を捕獲。114手目△3九桂成で飛車銀得と、菅井陣の体力をそいでいった。
「攻めたときに(菅井から)4筋に歩が立つのでこちらの王が薄い。自信のない局面が続いたかと思ったが、(108手目)△5九飛(第1図)と打ってと金が払える。頑張れそうかと思いました」。勝利への道筋を描けたのは投了12手前だった。
昨秋開催の竜王戦7番勝負を4連勝で終えたことで12月の公式戦がなくなった(未放映のテレビ対局は除く)。コロナ禍で対局が中断された20年5月以来だったが、実戦不足の不安一掃に十分な勝利。加えて前々期は第1局を渡辺明九段に139手、前期は羽生善治九段に91手で先手番で勝利した。今回は勝率上、不利な後手番だけに手応えは大きい。
王将3連覇と共に20期連続獲得の新記録へ好発進した。現在並ぶ大山康晴15世名人は63年度名人戦から66年度名人戦までで19期連続獲得を達成。20年7月、初タイトルとなる棋聖を獲得後、失敗なしの藤井はその更新に挑んでいる。
今回迎え撃つ菅井にはその大山との共通点が多い。岡山県出身、振り飛車党。立会人の塚田泰明九段は晩年の大山と12局の対戦があり、不戦勝1回を含む7勝5敗。名人挑戦権を争うA級順位戦でも5局あった。
「菅井八段の方が攻めていく。大山先生は自分から攻めず、(相手の)攻めのパワーを吸い取った」
王座の獲得経験がある塚田は「攻め十割」の愛称で知られ「気持ちよく攻めさせてもらえるのに、結果を見るといい勝負。攻めを切らされてしまう」と回想。大山は藤井が昨秋達成した全冠制覇を全3冠から全5冠時代に3度達成した昭和の巨人だった。
過去72期、白星発進した棋士は56勝16敗、・778の確率で7番勝負を制した。19期失敗なしの藤井の3連覇の機運はさらに高まった。
≪撮影お手の物?渾身の上目遣い≫藤井は終局後、勝利を記念した撮影に臨んだ。干支(えと)の辰年にちなみ、竜に乗るポーズ。指示を受けると「雲の中で…あぐら…」とつぶやきながら、竜のツノに頬を添わせ、渾身(こんしん)の上目遣いを見せた。だが「表情をつくるのが難しかったです」と苦笑い。記者から「将棋とどちらが難しいか?」と問われると、目尻を下げ「将棋ですね」と答え、撮影場所を後にした。