【王将戦】菅井八段 藤井王将の牙城に迫ったが…反省点は「中終盤の読みの精度」
2024年01月09日 05:09
芸能
第1日の夕刻には藤井からそれとなく千日手を打診されたが、いささかのブレもなく拒否。「凄く難しい局面でした」と苦悩の胸中を明かすも、背景には昨年5月28日に岩手県宮古市で行われた叡王戦第4局での苦い思い出があった。2度に及ぶ千日手を経て敗れた戦いで、2度目の千日手はリードを奪いながら打開できず。「あれは死ぬほど後悔しました」。現役最強棋士相手にせっかく優位を保ったのに、その座を自ら放棄してしまう失態はその後、脳裏から離れない。
同じ過ちを繰り返さないと誓って臨んだ今回の王将戦。相穴熊の膠着(こうちゃく)将棋で、先に手を出した方がカウンターを食らって不利になる我慢比べに耐えながらも、消費時間では頭一つ抜け出す。相手に中考を重ねさせ、終盤には1時間近くリードを広げる。残り10分を切って胸突き八丁状態だった藤井に対し、菅井の残り時間はなんと80分。形勢的には押されながら、このメリットを生かし切れれば十分に勝機があった。
控室では97手目▲4三歩成に代えて4一角の妙手が発見されていた。この進行ならば4、5筋に垂らした2枚の歩を「と金」に出世させ、後手穴熊の分厚い守りを少しずつはがせたかもしれない。
「(藤井の104手目)△6四角がいい手。あの局面にぴったりで…。(反省点は)中終盤の読みの精度です」
本譜は無念の結果でも、絶対王者の牙城に肉薄したのは確かだ。「振り飛車はAIの評価値を超える」という信念通り、藤井に重い圧をかけ続けた事実は誰も否定できない。「次(第2局)は近いので、気を取り直して頑張りたいです」。大盤解説に集まったファンに向けてきっぱり言い切った菅井。挽回のチャンスはたっぷりと残っている。 (我満 晴朗)