本宮泰風&山口祥行 映画「氷室蓮司」完成 「『日本統一』シリーズとは違うテイスト」
2024年03月27日 08:30
芸能
山口 僕と監督がホテルのロビーで話したところから始まりました。田村悠人(山口)のスピンオフはアクション主体だったので、氷室蓮司(本宮)に関してはダークヒーロー的なサスペンスがいいのではないかと考えたんです。判断は泰風と鈴木祐介エグゼクティブプロデューサーに任せました。
──氷室の父親の側面に焦点を当てたところが新鮮です。
山口 氷室はシリーズの前半には恋人がいて、それから結婚して子供ができました。しかし、これまでずっと仁侠の世界の切った張ったをメインにして、家族のこと、人間的なことは描いて来ませんでした。そこに焦点を当てるといいんじゃないかと思いました。
──最近、シリーズの方では本宮さんのアクションが減っている傾向があるので、この作品でたっぷり見られるのはうれしいです。
本宮 僕は減らそう減らそうとしているんです(笑)。
山口 僕は足りない足りないと思っています(笑)。
本宮 僕のアクションは基本的に最低限あればいい。それ以上やると中途半端になる気がするんです。
山口 できるのに面倒くさがっているんですよ。
本宮 需要がないと思っているんです。オジサンのアクションを見せるのは僕の趣味じゃない。それより面白いストーリーを見てもらった方がいいでしょう?
山口 できないならそれでもいいんすけど、できるんですから。できるのにもったいぶりやがって、と思います(笑)。
──この映画を見ると、やはり本宮さんのアクションがあった方が良いと思います。
本宮 それは気のせいです(笑)。
──本宮さんの格闘家としての強さが画面からにじみ出ています。
本宮 大変だったんです。撮影の早い段階で相手の頭が顔にぶつかって顔が腫れて真っ黒になっちゃって、ずっとメークで隠してもらっていました。
──本宮さんと同じ所属事務所の松本若菜さんがぜいたくな出演の仕方をしていますね。
本宮 鈴木プロデューサーが「松本さんはどうですか?」と言うから「ああ!」と思いました。親子の話の伏線を回収する時にあの役を誰にやってもらったらいいのかと考えていたので「いい人がいた」と思いました。
山口 若菜はいいヤツだから出てくれたんです。泰風は「松本」という名字の人と相性がいいんですよ(笑)。
──一昨年のNHK連続テレビ小説「ちむどんどん」で共演した元プロボクシング世界王者・具志堅用高さんも出演していますね。
本宮 具志堅さんとは家が近いんですよ。個人的なつながりで出てもらいました。
──氷室蓮司の息子・悠太(山岡樹)との芝居はいかがでしたか?
本宮 距離感をどうしようかと考えていたんです。答えが出ないまま現場に行って、彼とのフィーリングでやるしかないと思って、探り探りでああいう形になりました。結果的にほぼスキンシップ的なものがない。氷室の親としての感じは、やってみてああなりました。
山口 僕は氷室にドンピシャに近いものを感じました。「親」という字は木の上に立って見ると書く。その字のごとくだと思います。変にボディータッチをするのではなく、上から見守っているところが氷室らしい。
──この作品の最大の見どころはどこでしょう?
山口 やはり親としての氷室が描かれているところだと思います。息子が自分のせいで事件に巻き込まれる。そこに葛藤がある。胸の内は爆発しているけれど、それを表に出さずに氷室らしくクールに解決しようとする。私生活で親でもある泰風自身に近いところもある。そこがうまく描かれていると思います。
本宮 見どころは台湾のロケーションだと思います。同じ物語で国内で芝居をしても全く違うものになったでしょう。そのために台湾に行ったんです。ロケハンも入念にしたので、素晴らしいロケーションが映っています。
──この作品はシリーズの作風とはひと味違うサスペンスタッチが魅力だと思います。発案者の山口さんは完成した今、どのように感じていますか?
山口 ヤクザものでこのようなテイストの作品はなかなか見られないと思います。新しい試みをしたと思いますし、シリーズとはテイストが違う作品ができたことで、勝った!という思いがあります。
──この「日本統一」シリーズが10年以上続いている理由を山口さんはどう考えていますか?
山口 それは泰風のおかげじゃないですかね。たくさんのファンに応援してもらっているということもありますが、製作会社が変わって泰風がトップになって仕切るようになってから現場の雰囲気が良くなりました。スタッフにもキャストにも「もう辞めたい」と言う奴がいないんですよ。会社に例えれば、いい部署なんだと思います。
──現場での本宮さんはどんな雰囲気ですか?
山口 泰風はクールでどっしりしているイメージがありますけど、一番いたずらをします。やはりスタッフ、キャストに対して愛がありますよね。
──どんないたずらをするのですか?
山口 ここでは言えないようなこともしますよ(笑)。
──最近の本宮さんは?
山口 考えることが多すぎるんですよ。俳優としていろんな仕事をしながら次のシリーズのことを考えなくちゃいけない。だから、趣味の釣りにも行けていないと思います。
──いつか本宮さんが釣りをしているところを取材させてください。
本宮 お願いします。
山口 いいですね(笑)。
本宮 おまえも行くんだよ。
山口 オレは釣れないじゃないかよ。
本宮 釣れるんだよ。アジだったらおまえも釣れる。
──それでは、最後に読者へのメッセージをお願いします。
山口 この映画には氷室蓮司の新しい魅力が詰まっています。シリーズのファンの方々にはそれを楽しんでいただきたい。これまでにない極道映画になっているので、初見の方々には、こんなヤクザ映画もあるんだ!と感じていただきたいと思います。
本宮 今回はこれまで応援して来てくれた方々への感謝の思いを込めて家族の話をテーマに作った一面があります。シリーズを見たことがない方々には、違う角度から「日本統一」に入ってもらえたらうれしいです。
◆牧 元一(まき・もとかず) スポーツニッポン新聞社編集局文化社会部専門委員。テレビやラジオ、音楽、釣りなどを担当。