毎熊克哉 植物と育む芝居の完成 大河「光る君へ」で直秀ロス生んだ演技力の“栄養”
2024年04月07日 05:00
芸能
手掛ける多肉植物は冬場にそこまで水を必要とせず、多忙な日々の中でも無理なく育てられる。とはいえ日々変わるのが生き物だ。少し目を離した隙に赤くなるなど、目に見える変化がある。「これ、これという感じです。寒かったよねって。人が寒い所で頑張っている間に鼻がピンクになるみたいな。やはり生き物なんだなと思います」と植物の見せる成長に頬を緩めた。
栽培で培った観察眼は芝居にも生きている。植物は他の動物と違い、鳴き声でメッセージを発することはないが「ずっと見ていると、水をくれと言っているなとか、太陽の光をもっとくれよと言ってるように感じる」と、かすかな兆候が見て取れるという。「視覚的なものでないところで感じ取ることは人間同士でもあるのかなと思っています」
これまで映画を主戦場にしてきたが、最近はテレビドラマにも活動の場を広げている。NHK大河ドラマに「どうする家康」で初出演し、今年は「光る君へ」で2年連続出演。「光る君へ」では謎に包まれた「散楽一座」の直秀を好演。短い出演回数ながら、非業の死に「直秀ロス」との言葉が生まれるほどの反響を得た。
映画とドラマ。似て非なるものと毎熊は考える。見る人にとって、真っ暗で静かな劇場で大きなスクリーンに向き合う映画と、自宅や通勤時など“ながら見”しがちなドラマでは集中力が違う。「ドラマは分かりやすい表現を求められることが多い」。そこに抵抗もあったが、昨年のドラマ出演で「分かりやすい表現」ではなく「リアクションが大きい人物を演じる」と考え方を改めたことが奏功。「苦手意識が少しは払拭できた」と手応えを得た。
そんな現状を「葉挿ししていたものがちょっと成長して、ぷっくりしてきた」と、植物好きらしい言葉で説明する。葉挿しとは、ポロリと落ちた葉が根を生やし成長していく多肉植物の特性。ドラマの経験を還元し、今年は再び映画に注力していく。「スクリーン想定で映像をつくるのと、テレビドラマとは絶対に違う。そこを突き詰めたい」。映画で培った繊細な演技に、ドラマ出演で得た新たな知見も加わった。作品から刺激を受けるたび、演技の枝葉は広がっていく。
「役者も最初から天才はいなくて成長には時間がかかる。自分も役者を始めて15年で凄く成長したなと思うし、まだこんなものかと思ったりもする。時間がかかるというのは、気が遠くなるようでいて、やはり楽しいことなのかもしれない」。植物も演技も、じっくり時間をかけて見る人の心に残る花を咲かせるつもりだ。(前田 拓磨)
≪テレ東「好きなオトコと…」愛されるヒモ男役熱演中「財産に≫放送中のテレビ東京ドラマ「好きなオトコと別れたい」(水曜深夜0・30)では愛されるヒモ男を熱演している。「こんなに人に甘えられて、許されて好かれるというのは人として憧れがある」と役どころを解説。「自分の大きな財産になるのかも」と手応えを口にした。そんな毎熊に主演の堀田茜(31)も「安心して寄りかかることができた」と信頼を寄せた。
◇毎熊 克哉(まいぐま・かつや)1987年(昭62)3月28日生まれ、広島県出身の37歳。2016年公開の主演映画「ケンとカズ」で第71回毎日映画コンクールスポニチグランプリ新人賞。18年にはNHK連続テレビ小説「まんぷく」に出演。血液型A。