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こだわりの“アジ愛” 元気印の88歳長老、ビシ120号一筋

2018年07月17日 15:12

社会

 【根ほり葉ほりおじゃま虫ま〜す】マアジ釣りの主流がライトタックルに移りつつある。40号のビシカゴで浅場狙い。女性、子供でもらくちん。一方でかたくなに120号をぶら下げる船宿も存在する。小柴・小金丸は古典愛好家のたまり場だ。 (スポニチAPC 町田 孟)

 台風余波。雲がぶんぶん飛んでいく。小山満寿夫船長の判断は「大丈夫。出ますよー」。釣り場はいくぶん風をしのげるそうだ。

 とはいえ、穏やかとはいかない。左舷トモ。ご老人が船べりにしがみつくように支度していた。横浜市の川島千代松さんは8月に89歳になる。どこも悪いところはない。記憶も目も確か。「耳だって悪口以外も聞こえる」。船宿の女将さんをはじめ常連さんも保証する健康“優老人”なのだ。

 1メートル53、58キロ、昔風に言えば五尺の体。しゃっきりしているのは横浜市緑区の「農家の2代目」。畑は1町歩ほどあり「米から野菜、なんでも作ったよ」。足腰が鍛えられるわけだ。

 20年ほど前からは「カレー屋もやっていた」。異色の兼業。「インドのとなり」というチェーン店の一翼を担っていた。息子の稔夫さん(60)の「もう年だから」の言葉で店も1月に閉め完全リタイア。月に2回の釣りが何よりのお楽しみだ。「酒は缶ビール1本そこそこ。ギャンブルも興味なし」。農業に加え副業もとなると遊び歩く暇はなかったといえる。

 タイもタチウオも狙う。それらに比べ120号のビシ釣りは相当重労働に違いない。「でも、使い慣れてるから。アジはここと決めてるしね」。お客さんに顔なじみが多いのも足を運ぶ理由の1つ。いわば港のお達者クラブだ。

 運転免許はすでに返納した。しかし、不便はない。顔なじみで、実家近くの青葉区に住む和田年弘さん(72)がアッシー役を買って出てくれている。老人会にも入っているが、仕事がアウトドアだったからか「あまり行かない」。

 数少なくなってきた戦争を知っている世代だ。兵役は予定されていた「2年前に終戦」。ただリアル体験はある。「頭の上での空中戦を見た。怖かったねえ」。それまでの淡々とした口調が少し変わった。

 現在、キヨ夫人(83)と長男夫婦に孫2人が同居。釣果があれば嫁いでいる娘さんの孫2人も含めて集合するという。20メートル近い風にもめげず出かけるほどの唯一の趣味。川島一族の接着剤となっているのかもしれない。

 川島さんと同伴する奇特な和田さん。船上でも横に座り、仕掛けの点検など身の回りを世話していた。仕事は「介護施設の運転手やってます」。まさに、うってつけのヘルパーだ。「昔から知ってる人。私もね、釣りが好きなこともある。ご本人が行きたがってるのに自分だけ来るってのもなんか…」。もう◎が付くお人好し。4年前に夫人を亡くしているが現在は1歳半の孫に夢中だ。動画に収めて「可愛いでしょーっ」。うーん好々爺(や)。

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