フィッシングニュース
「タナゴコロ賞」でタナゴの心知る?片手にビッシリ47匹
2024年03月26日 04:30
社会
あのコマを再現…いや何なら超えたい。前回の取材でやっと3匹釣ったばかりの記者は無謀にも“ジャック超え”に狙いを定めた。ややどんくさめのキャラとして描かれたジャック。「アイツが99匹なら100匹はイケる」。その見立ては完全に間違っていた。
前回と同じY池へ。気温が上がりタナゴ師たちが「今日は120匹」「30分弱で20匹」などと釣果を報告しあう中、こちらは1匹目がなかなか釣れない。その場にいるのが恥ずかしいほどだ。ようやく釣れ始めても多くは外道のクチボソ。少しはコツをつかんだつもりだったが…。
そんな時、声を掛けてくれたのが常連のIさん。「この餌じゃクチボソしか釣れんぞ」。何で!?「タナゴ用」と書いてるのに!後で感じたことだが、集魚効果の高い餌はタナゴが寄っても他の大きな魚に食い負けてしまうこともあるようだ。「オモリもまだ重い。これじゃタナゴの繊細な当たりは取れない」。小さな魚だからこその難しさ。「竿は鉛筆持ちで」「合わせが大きすぎて魚がはじかれる」と1メートルもない竿を一緒に持って熱血指導を受けた上に、ハリや糸、ウキなど全て調整した仕掛けまでもらってしまった。それでも、この日の釣果は15匹。ジャックまであと84匹…。
ただ、後日もらった仕掛けを竿にセットし、I氏の教えを一つ一つ思い出しながら実践してみたらバカスカ釣れた。今まで取れなかった当たりにも合わせられるようになり、バケツにどんどんタナゴが増えていく。その数、2時間で47匹。99匹には遠く及ばないが、あのコマの再現が狙いなら「片手に47匹なら密度は迫れる計算」と自分を納得させた。
だが、いざ手のひらに乗せようとしたところでI氏の言葉が脳裏をよぎった。「人間の手の温度は、冷たい水の中で暮らす魚にとってやけどする熱さだぞ」。それに目の前でぴちゃぴちゃ跳ねまくっているタナゴが、おとなしく乗ってくれる気もしない。手を水でしっかり冷やしてから乗せることも考えたが、結局バケツごと手のひらに乗せての「掌賞」再現とした。釣りの常識も魚に関する知識も、この50年で変わっている。
それにしても「掌賞」とはうまい命名だ。手のひらを意味する「掌」を「タナゴの心」と解釈したようで面白い。漫画で描かれた、小さなタナゴ一匹一匹に心を砕くように釣る面白さは50年たっても変わらない。産卵期を前に婚姻色の出たバラタナゴの美しさも、きっと変わっていない。ジャック超えの挑戦は続けるつもりだ。