記憶が飛んだファウルボール 専大松戸・山方花音マネジャーが憧れ続けた甲子園

2023年04月05日 21:03

野球

記憶が飛んだファウルボール 専大松戸・山方花音マネジャーが憧れ続けた甲子園
憧れの甲子園で声援を送った山方マネジャー(左) (撮影・柳内 遼平) Photo By スポニチ
 今春の選抜大会に出場した専大松戸(千葉)は甲子園同一大会初の2勝と、初の8強入りを果たした。2年生マネジャーの山方花音(はなね)さんは万感の思いで熱戦を見守った。野球好きの両親の影響で0歳4カ月から甲子園で観戦を続けた「高校野球マニア」は専大松戸に進学。昨夏に練習試合でのアクシデントで一時はチームを離れるも、歴史が変わる瞬間をアルプス席で目に焼き付けた。
 不運な事故だった。昨年の6月5日、群馬の強豪校との練習試合。遠征に帯同した山方さんは一塁側ベンチにいた。試合中にバッグから用具を取りだそうと一瞬、試合から目を離した。味方選手が打った強烈なファウルボール。ベンチのナインは「危ない!」と声を上げたが、それよりも打球が速かった。頭部に打球が直撃した山方さんはその場に倒れた。

 「当たった瞬間、視界が回った。その時の記憶はあまりないです」。左耳と左目との中間の上部に当たり頭蓋骨骨折。意識はもうろうとし、吐き気もした。すぐにサイレンを鳴らした救急車で搬送された。最初の病院では対処できず前橋市の大きな病院に運ばれた。手術は必要なしとの診断を受けたが緊急入院することになった。

 野球をプレーした父・知一さん、ソフトボールをプレーした母・幸子さんを両親に持ち、兵庫県に住んでいた0歳4カ月から甲子園に通った。千葉に引っ越し後も毎年夏には家族で甲子園観戦。これまで約300試合も観戦してきた。そして中学生の時に転機が。千葉で専大松戸の試合を観戦し、活気のあるプレーだけでなく用具の整理整頓やあいさつなどグラウンド外の行動でも「高校野球らしい姿」を貫くナインに惹かれた。中学までは陸上部に所属し、3年夏には高跳びで千葉県5位になる実力者だったが「野球部のマネジャーになるのが夢だった」と迷いなく転身を決意。専大松戸に進学し、野球部のマネジャーとなった。

 病院のベッドで天井を見つめて過ごす日々。大好きな野球で初めて恐怖を感じた。それでも「すぐに戻りたかった」と野球への情熱は変わらなかった。「早く退院したい」と医師に相談し、検査を受けた上で約10日で退院。夏の大会を控える野球部に復帰した。持丸修一監督からは「大丈夫か?無理しなくていいんだよ」と茨城弁で心配されたが、「楽しいのでここで頑張りたい」と譲らなかった。

 入学して2度の春は甲子園で迎えた。「声援OK」が復活したアルプス席で声をからし、ナインがもたらした2勝にメガホンを叩いて喜んだ。歴史的勝利で準々決勝に駒を進めるも広陵(広島)に敗れて終戦。一塁側アルプス席で見守り「ここまで来れたのは選手が頑張ってくれた結果だと思います。また夏に頑張ってみんなで戻ってきたい」。苦難を乗り越えてたどり着いた憧れの聖地。2度目の夏も甲子園で迎える。(柳内 遼平)

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