【内田雅也の追球】盗塁は数ではない 阪神・岡田監督が目指す「ここという時に」が勝機に

2023年09月02日 08:00

野球

【内田雅也の追球】盗塁は数ではない 阪神・岡田監督が目指す「ここという時に」が勝機に
<ヤ・神>3回無死一塁、近本は二盗を決める(撮影・北條 貴史) Photo By スポニチ
 【セ・リーグ   阪神4-2ヤクルト ( 2023年9月1日    神宮 )】 7月にヤクルトに入団した新外国人右腕エルビン・ロドリゲスのプロフィルを見ると、ドミニカ共和国中南部のサンクリストバル出身とある。
 1998年1月に訪れた。ウインターリーグを観に行った首都サントドミンゴのキスケージャ球場で元日本ハムのバーナード・ブリトーに会い、翌日、自宅に招かれた。途中で同地の原っぱのような野球場に立ち寄った。木造スタンドに相当な観衆が詰めかけていた。「メジャーもマイナーリーガーも帰ってきて、地域対抗戦をしているんだ」と教えてくれた。

 投手は速球を投げ、打者はフルスイングする。クイック投法など細かな技術はない。いや意識していない様子だった。

 四半世紀も前の記憶がよみがえり、ロドリゲスを見ていた。初回先頭、近本光司が内野安打で出ると、けん制球を3球放って足を警戒していた。ただ投球タイムは手もとの計測で1秒28~45と平凡。走れるとみていた。

 「いやいや、簡単じゃないですよ」と試合後、一塁コーチボックスに立つ外野守備走塁コーチ・筒井壮は言った。この日の初対戦に向け「懸命に研究して、監督からサインが出た時に成功できるように備えていました」

 3回表の追加点はこの弱点を突いた。先頭・近本が四球で出て中野拓夢の初球に二盗を決めた。悪送球もあり無死三塁となった。中野が前進守備の一塁左をゴロで抜く適時打を放ったのだった。

 6回表も先頭・佐藤輝明が四球で出て、また初球で二盗を決めている。2球連続でけん制された直後に走った。クセか傾向をつかんでいたか。

 7回表には中野拓夢が二盗(投手は梅野雄吾)。この夜3盗塁でチーム盗塁数は65個。広島に次ぐ数字だ。シーズン78個ペースで110個の昨年から約3割減となる。

 「数は意識していません」と筒井は言った。「開幕前から監督の方針がありましたから。サインが出た時にいかに走れるか。成功率を高めるか。必死でやっています」

 阪神は昨年まで4年連続でリーグ最多盗塁を記録していた。だが監督・岡田彰布は昨秋の就任時「盗塁は数じゃない」と言った。「ここという時に走れるかどうかよ」

 走者がいつ走ってもいいグリーンライト(青信号)でなく、盗塁はサインで指示を出す。

 この夜、得点につながった1個は価値ある盗塁だった。 =敬称略=
 (編集委員)

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