【王将戦】攻める菅井竜也八段 逆襲へ「向かい飛車」選択 第2局「必要な恥」ポジティブ思考で挑戦
2024年01月28日 05:00
芸能
「棋士になって一番の恥。でも自分にとっては必要な恥でした」とポジティブ思考で臨んだ今局の7手目、2八の飛車をひょいとつまんで8八へと配置する(第1図)。いわゆる「向かい飛車」の立ち上がり。藤井相手のタイトル戦では8戦連続して三間飛車をぶつけたが、9戦目にして初めて趣向を変えた。タイトル戦だけではなく、17年8月の王将戦1次予選で初対決以来、16局目にして初の戦型だ。
その後は角交換を経て「昔からある将棋ですよね」と、流れるように手を進める。33手目で2度目の角交換を決意するのに要した51分が唯一の長考だ。一手一手が力強い。過去2局とも難攻不落だった敵将の守護陣から離れたエリアでの攻め合いも、ほぼ想定内の指し回しで指し掛けの夜を迎えた。
今局は日本将棋連盟常務理事で、菅井の師匠でもある井上慶太九段(60)が公務として来場。かつて振り飛車戦法の限界を訴え、居飛車へ変節を申し出た菅井を「あんた、そんなこと言うのは100年早い」と叱咤(しった)激励したエピソードは有名だ。26日の前夜祭では藤井と並んで壇上にかしこまる愛弟子に、完敗だった第2局の話題を容赦なく浴びせ、まさかの「弟子いじり」に菅井も苦笑い。
棋界を代表する名伯楽は、菅井のこの日の滑り出しに「これは藤井王将もさすがに予想していなかったでしょう」と目尻を下げる。棋譜中継でのAI評価値は藤井推しだが、挑戦者としては「好きな手を精いっぱい指したい」と予告していたとおり、伸び伸びとした進行だ。
「早い戦いになりました」と第1日を振り返った菅井。前局とは対照的に、その表情に陰りはない。鋭いジャブを出し合って攻めどころを探る格闘家のような力強い眼光が戻ってきた。逆襲のにおいは対局室に色濃く漂っている。