「三振、ゲームセット」…から生き返った市西宮 同点、勝ち越し、同点、勝ち越し…の激闘12回

2023年07月11日 16:38

野球

「三振、ゲームセット」…から生き返った市西宮 同点、勝ち越し、同点、勝ち越し…の激闘12回
勝利後、応援席にあいさつする市西宮の選手たち。全員が「5厘刈り」だった(11日、尼崎ベイコム野球場) Photo By スポニチ
 【第105回全国高校野球選手権兵庫大会・2回戦   市西宮6―4洲本(延長12回) ( 2023年7月11日    尼崎ベイコム野球場 )】 市西宮は幾度も敗戦の窮地に陥りながら、生き返った。驚異的な粘りで延長12回、3時間21分の激闘を制した。
 2点を追う9回表2死一塁、下田弘太(3年)は1ボール―2ストライクから低めスライダーを空振りした。三振、ゲームセットと思えたが、ワンバウンドした投球を捕手が後逸(記録は暴投)。下田は懸命に走り、一塁へ頭から突っ込んで生きた。九死に一生の振り逃げだった。

 「え? 下田がヘッド!?」と次打者席にいた田中至(3年)は驚いた。「ふだんはあんなことやらないタイプなので、びっくりしました。でも“気持ち入ってるんやな。よし”って」触発されて打席に向かった。

 「自分に回って来い、回って来いと思っていた」と待ち望んだ打席で直球をたたいた。「好調だと、あっちの打球が伸びるんです」と、右翼頭上をライナーで越える起死回生の三塁打となった。2者が還り同点。試合をふりだしに戻した。

 無死一、二塁から始めるタイブレークの延長戦。10回表は無得点に終わった。岩本健吾(3年)が送りバントを失敗(三振)したのが響いた。その岩本がその裏、大ファインプレーでピンチを救った。1死満塁からのスクイズで三塁前小飛球をダイビングして好捕。そのまま三塁走者にタッチする併殺でサヨナラ負けの窮地を脱した。

 11回。表に生末磨宏(3年)の二塁打と小野颯真(3年)の岡田万册(3年)好走塁での中犠飛で2点を勝ち越したが、裏に同点にされた。

 主将の小野が言う。「相手も必死に追いついてきた。押され気味でしたが、今までやってきた努力と気持ちの強さで絶対負けないと話しあって、やっていました」

 12回表、1死二、三塁での決勝打はギャンブルと言えるヒットエンドランだった。吉田俊介監督は「前半は作戦失敗(盗塁憤死など)がありましたが、最後は思い切った作戦で打開しないといけないと思った」と話した。打者・南光悟(2年)の2ボール―1ストライクから、二、三塁走者がともにスタート。南光の打球はライナーで右翼線に弾み、2点打となった。

 「練習試合で1度、走者三塁のヒットエンドランをしていたので、驚きはしませんでした。1ストライク目の球筋を見て“ゴロを打とう”ではなく普通に“ヒットを打とう”と、2点取る気で打ちました」

 冷静だった。南光は9回裏から3番手投手としてマウンドに上っていた。12回裏は無死満塁。スクイズ失敗、三振で2死までこぎつけると、ベンチから伝令が来た。

 マウンドに集まった内野陣に、しんがりの背番号20、内田光太郎(3年)が「今はしんどいけど、絶対に勝てる。さあ、いこう!」と声をかけた。南光は「気合を入れてもらった」と最後の打者を遊ゴロに切った。

 猛暑のなか、相手投手も味方の外野手も足がつって途中交代となった。「大変な試合でした」と監督が言う死闘だった。

 頭髪は自由の市西宮だが、ベンチ入りメンバーは全員が「5厘」の丸刈りだった。「気持ちの勝利」と言う主将の小野の横で、監督は「髪の毛と気合は関係ないぞ、と言うのですが……。よくやりました」と、たたえていた。 (内田 雅也)

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