エンゼルス・大谷 伝説のダブルヘッダー、米初完封&2打席連発、残留正式発表「スッキリ」

2023年07月29日 02:30

野球

エンゼルス・大谷 伝説のダブルヘッダー、米初完封&2打席連発、残留正式発表「スッキリ」
<タイガース・エンゼルス>第1試合、メジャー初完封勝を挙げた大谷(撮影・沢田 明徳)  Photo By スポニチ
 【ア・リーグ   エンゼルス6―0タイガース、エンゼルス11―4タイガース ( 2023年7月27日    デトロイト )】 伝説の7・27だ。エンゼルスの大谷翔平投手(29)が27日(日本時間28日)、試合前に今夏はトレードされないことが球団から発表されて臨んだタイガースとのダブルヘッダーで、投打にフル回転した。第1試合でメジャー初完投を1安打完封で飾り9勝目。第2試合は2回に37号2ラン、4回に38号ソロを放った。ダブルヘッダーで完封し、もう1試合で本塁打したのは史上初の快挙。トレード市場で「買い手」となる決断をしたチームに勇気を与える2勝となった。
 登板前夜。大谷は水原一平通訳から聞かされ、大リーグ公式サイトを通じてホワイトソックスからジオリト、ロペスの両右腕の獲得を知ったという。8月1日(日本時間2日)のトレード期限を待たず、試合前に球団が今夏の自身の「残留」を正式に発表。メジャー6年目で初めて夏のトレード市場の「買い手」に回ったチームに、自然と心は高揚した。

 「ずっと“売り手”側の状況だった。こういう経験は初めて」

 その気合は白球に乗り移り、初回から直球で押した。2回に一塁ベースカバーの際に打者走者と交錯するアクシデントに見舞われたが、球威、制球共に揺るがず「直球も良かったし、序盤はまずコマンド(制球)が良かった。リズムに乗りやすかった」。4回からはこれまで自分で出していたサインを、捕手ウォラクに任せて相手打線を幻惑。5回に先頭打者に中前打を浴びたが、これがこの日、唯一の被安打となった。

 7回には最速99.5マイル(約160キロ)を計測するほどスタミナも十分。8回、97球を投げ終えた後には、ベンチでフィル・ネビン監督に「I’m finishing」(俺が終わらせます!)と続投を志願。メジャーで初めて9回のマウンドに上がり、最後まで締めた。通算83試合目の登板で初の完封勝利を飾り9勝目。111球中、直球は今季最多56%(62球)。6月末から悩まされた右手中指の割れた爪、マメは完治し「指の状態も良かったし、投げ心地も、動き方もしっくりきていた」とうなずいた。

 ダブルヘッダー後の移動の負担を考慮し、当初の予定を1日前倒して臨んだ。雨天順延になった前日は天候が悪化する前にブルペン入りを済ませるなど用意周到だった。自身を中心とした“トレード狂騒曲”が終焉(しゅうえん)を迎え、精神的な負担は減り、心から望む「ひりひりした野球」へ向けた空気感は追い風となった。

 「ダブルヘッダーの初戦。チーム的にも個人的にも、もちろん良かった。周りの声も含めてスッキリ臨めた。これからプレーオフを目指して頑張りたい」

 2時間16分の「SHO TIME」。ただ、これは伝説の1日の始まりに過ぎなかった。

 メジャー初完封直後。汗で髪をびっしょり濡らした大谷はクラブハウス外で7分間の取材に応じた。その後、アイシングをする時間はなかった。第1試合終了からちょうど45分後の午後4時11分。ネクストバッターズサークルでいつものようにバットを構えていた。

 完封勝利から1時間19分後の同4時45分、今度は打者・大谷が牙をむいた。2回にマニングの外角速球を左翼席へ運ぶ、3試合ぶりの37号2ラン。4回にはけたたましい打球音を響かせて右中間へ2打席連発となる38号を運んだ。リーグ2位のホワイトソックス・ロベルト(28本塁打)とは10本差に広げ、シーズン59発ペースとした。

 フィル・ネビン監督は「2試合通じて今まで見たことのないパフォーマンスを見せてくれた。どのレベルでも見たことがないかもしれない」。同じ日に完封&2本塁打は71年のソニー・シーバート(レッドソックス)以来52年ぶり5人目で、1安打完封に限れば同年にノーヒットノーランのリック・ワイズ(フィリーズ)以来2人目。ダブルヘッダーで完封勝利と、もう1試合で本塁打を放つのは、史上初の快挙だった。

 ただ、2本目を打った直後に左手で左腰付近を押さえ、左脇腹を伸ばして苦痛に顔をゆがめながらダイヤモンドを一周。7回の打席で代打が送られた。球団発表は「けいれん」で、ネビン監督は「体全体の筋肉がけいれんを起こした。運動量が多い一日だった」と説明。「水分を取り、今日はしっかり寝ることになる。明日(28日=日本時間29日)のプレーに支障はないだろう」と軽症を強調した。

 その言葉通りか、試合後にハイタッチの列には加わらなかったが、クラブハウスでは抑え右腕エステベスと談笑。ネビン監督の監督代行時代からの通算100勝を祝うケーキを皿に乗せ食事会場に向かうなど、リラックスして1日2勝の余韻を楽しんでいた。

 チームは4連勝を飾り、ワイルドカード圏内のブルージェイズまで3ゲーム差に縮めた。28日からは敵地でそのブ軍との直接対決3連戦が待つ。「こうやって“買い手”側に回ることで、戦力的にも強化されるし、やる気とか刺激とか、そういったものも変わってくる」と大谷。伝説の7.27はステップボード。自身初のポストシーズン進出へ、新たな伝説の幕を開ける。(柳原 直之)

 ≪1日で完封&本塁打、日本では55年に金田正一が達成≫日本球界でもダブルヘッダーの1試合目で完封、2試合目で本塁打を放った選手がいる。歴代最多の400勝を挙げ、通算38本塁打を誇る金田正一(国鉄―巨人)が、国鉄在籍時の55年5月26日の中日戦ダブルヘッダー第1試合で4安打、12三振で1―0完封。続く第2試合はベンチスタートも、試合が延長戦にもつれ込むと、11回2死から救援。14回に自ら左翼席にサヨナラ2ランを放ちこの日2勝目を手にした。

 ≪日本投手の完封は11人28度目≫日本投手の完封は大谷で11人28度目。最多は野茂英雄(ドジャースなど)の9度で、黒田博樹(ドジャースなど)5度、田中将大(ヤンキース)4度と続く。また、大谷は日本ハム時代は7完封で、プロ初完封は2年目の14年5月13日の西武戦(函館)で126球を投げ6安打、9三振3四球。最後の完封は日本ハムで最後の登板となった17年10月4日のオリックス戦(札幌ドーム)。66年ぶりとなる「4番・投手」で出場し打席は4打数1安打、投げては124球で2安打、10三振5四球に封じた。

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