【内田雅也の追球】変身したビーズリーに、メッセンジャーの「歩み」を見た

2023年08月04日 08:00

野球

【内田雅也の追球】変身したビーズリーに、メッセンジャーの「歩み」を見た
<中・神(18)> バンテリンドームのマウンドをチェックするビーズリー(撮影・大森 寛明) Photo By スポニチ
 【セ・リーグ   阪神5―2中日 ( 2023年8月3日    バンテリンD )】 来日初勝利をあげた阪神先発のジェレミー・ビーズリーは確かに変身していた。1軍登板は敗戦投手となった6月23日のDeNA戦(横浜)以来。この間、2軍で課題を克服していた。
 制球力をつけ、四球から崩れる悪癖がなくなった。変化球の精度を高め投球の幅が広がった。持ち味の曲がり幅の大きなスライダー「スイーパー」を巧みに使う。さらに右打者内角へのツーシーム、左打者外角への「バックドア」スライダー、左打者内角へのカッター……など、力みが消え、安定感が増していた。

 3回裏2死一、二塁で迎えた細川成也には追い込んでサインに2度首を振り、外角スライダーで空振り三振に切った。「ピンチでも意図した所に投げ込むことができた」と崩れなかった。

 日本で成長する外国人投手としてランディ・メッセンジャーを思った。2010年に来日した当初はリリーフで、開幕後の春先に先発に転向したという点も共通する。

 メッセンジャーも2軍で速球の角度をつけ、カーブの精度を高めて成長した。後に最多勝を獲り、開幕投手を務め、エースと呼ばれた。

 ともに大リーガーだったが、メッセンジャーは通算4勝2セーブ、ビーズリーは0勝1セーブ。日本で学ぼうとする勤勉さがあった。メッセンジャーは当時投手コーチの久保康生(現巨人コーチ)の指導や捕手・藤井彰人(現広島コーチ)の話に耳を傾けていた。

 「言い訳を作るな!」と自分に言い聞かせてきた。著書『ランディ・メッセンジャー すべてはタイガースのために』(洋泉社)に記している。来日した大リーガーが、ボールが……気候が……マウンドが……と不満を口にして失敗していった前例を知っていた。「自分の力を信じ、自分の仕事に集中するだけだ」

 ビーズリーも、外国人にとっての大切な姿勢を知っている。この日練習中、5ミリ低くなったというバンテリンドームのマウンドに顔を寄せ、綿密にチェックしていた。降板後もベンチで梅野隆太郎や投手コーチ・安藤優也、野手陣とも話し込む姿があった。

 今月1日、神戸で生まれた長男(第1子)にウイニングボールを届けるのだという。そう言えば、メッセンジャーの初勝利(10年7月11日・横浜戦)もミドルネームに「ジジョ」と名づけた次女が生まれた後の登板だった。 =敬称略=
 (編集委員)

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