【コラム】西部謙司
プレミアリーグ優勝戦線に波乱なし
2018年08月22日 06:00
サッカー
リバプールの特徴はサラー、フィルミーノ、マネの3トップによる速攻とミルナー、ヘンダーソンを中心とするハイプレス。ケイタの加速力、技術、運動量はダイナミックかつスピーディーなリバプールのスタイルと合致している。選手層も厚くなり、プレミアのみならずCLも十分狙える陣容である。
シティはレスターからリヤド・マフレズを獲得したぐらいで目立った補強はない。ただ、昨季の時点で必要な選手はほぼ獲得している。昨季猛威を振るった攻撃力は健在。懸念材料はリバプールを苦手としていることだろう。昨季はリバプールがとりこぼしていたので大きく差を広げることができたが、接戦が予想される今季はライバルとの直接対決が優勝の行方を左右しそうだ。シティのパスワークを破壊するリバプールへの対策を見出せるかどうかが焦点になる。
同じくほとんど補強がないトッテナムは放出もなく、昨季のメンバーでの熟成を図る。ハリー・ケイン、デレ・アリなどイングランド代表メンバーを抱え、年齢的にもピークを迎える選手も多い。
マウリツィオ・サッリ監督を迎えたチェルシーはプレースタイルを一変させた。しかし、サッリ監督の洗練されたパスワークのサッカーに合致した選手を揃えられていない。もう少し時間がかかるのではないか。ウナイ・エメリ新監督を迎えたアーセナルも同様で、軌道に乗るのは先だろう。
優勝候補で問題を抱えているのはマンチェスター・ユナイテッドかもしれない。もともとジョゼ・モウリーニョ監督は3年目で失速する癖がある。即戦力を集めてバランスの良いチームを作る手腕は抜群で、これまで率いてきたチームでは就任から2シーズンは必ずタイトルを獲得してきた。ただ、すぐに結果を出すチーム編成には伸びしろが少ない。また、徹底した分析や戦術の緻密さはチームを疲弊させてしまう。昨季は本来なら優勝できるはずだったが、さらに上を行くシティの後塵を拝した。守備陣の補強もままならず、これで冬にポール・ポグバが移籍することになれば大打撃を受けそうだ。(西部謙司=スポーツライター)