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カタール後の日本代表の課題

2023年02月03日 08:00

サッカー

カタール後の日本代表の課題
FA杯4回戦・リバプール戦でDFアレクサンダーアーノルド(左)を翻弄したブライトンMF三笘薫(ロイター)
 ブライトンの三笘薫が凄いことになっていて、レアル・ソシエダでは久保建英が確固たる地位を築きつつある。フランスでは伊東純也が活躍中。ブンデスリーガでは鎌田大地、堂安律のいっそうの飛躍が期待されている。
 カタールワールドカップが終わってわずかの期間に、日本代表選手たちがスケールアップしているように感じられる。カタールではドイツ、スペインを破り、クロアチアにはPK戦で敗れたものの、ファンを納得させる戦いをみせてくれたわけだが、これは事前の期待値がそれほど高くなかったことの裏返しでもあった。

 日本代表は極めて守備的な戦い方でドイツ、スペインを破ったのだが、強豪2カ国がいるこのグループの難しさは誰もが知っていたから、スペインに80%もボールを支配されてもそれを不満に感じた人はあまりいなかったはずだ。

 しかし、日本が優勝候補の1つだったとしたらどうだろう。おそらくドイツ戦、スペイン戦への評価はかなり違うものになっていたに違いない。カタール大会でベスト16に進んだからといって、日本がいきなり優勝候補の1つにはならない。しかし、期待のハードルはどうしても上がる。

 攻撃のタレントの活躍はこの状況には追い風になる。より攻撃的なプレーを披露することで、さらに期待が膨らんでいくかもしれない。名波浩、前田遼一という新しいコーチングスタッフや、中村俊輔、中村憲剛が代表スタッフに加わるかもしれないといった噂も含め、より攻撃的なプレースタイルへ舵を切っていくのではないかと思われる。

 ただ、忘れてならないのは、カタール大会を戦った日本代表は守備的なプレーだったという事実だ。攻撃的なプレーでドイツ、スペインをねじ伏せたわけではない。逆にボールを支配できたコスタリカ戦は敗れている。成功したプレースタイルを捨てて、成功しなかったほうにリソースを全振りするのは不合理である。

 一方で、カタール大会のプレーを続けるだけでは進歩がない。つまり、今後の日本代表はカタール大会を踏襲しつつ、少しずつでも攻撃力を上げていく課題に取り組んでいくわけだが、その舵取りは簡単ではないと思う。

 森保一監督のカタールでの快挙は、自分たちは決して強豪ではないという自覚を4年間持ち続けたことがカギだった。一方で強豪国に勝てないとはかぎらないという自負もあった。このバランス感覚を次回大会まで維持できるかどうか。攻撃のタレントが一気に伸びてきた感のある今、それに流されてしまうことがないように手綱を握れるかどうかが問われるのではないか。(西部謙司=スポーツライター)

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