【コラム】西部謙司
海外移籍とJリーグの方向性
2019年08月02日 12:30
サッカー
選手の情報はいまや世界中に共有されている。有望な若手の映像はストックされ、簡単に入手できるようになっている。依然は目利きのスカウトが判断していた能力も、AIを使って数値化できるようにすらなった。そうしたスカウト網の広がりによって、日本も確実に市場に取り込まれているわけだ。
Jリーグでレギュラーポジションを確保したと思ったら1年も経たずに移籍していく。この流れが本格化すると編成はダイナミックにならざるをえない。すでに国内間の移籍もかつてないほど活発になっている。
サッカー界のヒエラルキーの最上位にいるのは、レアル・マドリーやバルセロナ、マンチェスター・シティなどのビッグクラブだ。Jリーグがどこの階層かはともかく、上位でないのは確かであり、上位クラブからの引き抜きは避けられない。選手への年俸保証という点では中国や中東にも太刀打ちできない。つまり、引き抜かれることを前提に補強ルートを確保しているJクラブが有利になっていくだろう。
ヨーロッパではFCポルトがこの代表格だ。CLでのベスト16、ベスト8相当の実力を維持しつつ、上位クラブへの移籍と補強を同時進行させて経営と強さを保っている。ポルトガルはブラジルとのパイプが強みで、もともとブラジル人選手は外国人枠から外れていた。言葉も同じであり、FCポルトはいわば若手ブラジル人選手の登竜門になっている。ウクライナのシャフタール・ドネツクも似たような方針で存在感を高めた。
Jリーグからレアル・マドリーが生まれる可能性はないが、FCポルトのようなクラブは出てくるだろう。育成だけでは追いつかないとき、どういう補給路を持っているかが問われそうだ。(西部謙司=スポーツライター)