【コラム】西部謙司
グループリーグを終えて コパ・アメリカ強豪分析 ウルグアイ
2019年06月27日 20:00
サッカー
近年は「古豪」と紹介されるようになっていた。1970年ワールドカップの4位を最後にベスト8にも届かなかった。しかし、2010年南アフリカ大会では久々の4位、オスカル・タバレス監督が4年間率いたチームだった。現在、13年間におよぶ長期政権となっている。
72歳のタバレス監督にとって、選手たちは子供どころか孫の年齢だ。メンバーは長年固定的で今大会の主力も昨年のロシアワールドカップと変わっていない。戦い方もまったく同じ。とはいえ、ロシアワールドカップの時点でそれ以前からの変化はあった。
MFにベンタンクール、ベシーノが台頭している。長身でテクニックに優れた、よく似た2人は、それまでのウルグアイにはあまりいないタイプだった。ベンタンクールとベシーノの登場で、堅守速攻一本だった戦術にボールを保持して攻撃するオプションが加わっている。
ただ、基調は伝統の堅守だ。ゴディンとヒメネスのセンターバックコンビ、そしてスアレスとカバーニの2トップ、最後尾と最前線のペアがチームの牽引車であることに変わりない。中盤に少し技巧が加わったとはいえ、基本はしっかり守って2トップの決定力で仕留めるやり方である。
攻撃はそれほど多彩ではない。4-4-2でプレーしているが、ロシアワールドカップでは大会途中から4-3-1-2に変化した。このときトップ下に入ったのがベンタンクールで、攻撃よりも相手のビルドアップの起点を抑えるほうが狙いだった。サイドに攻撃的MFを配置してもさほどサイド攻撃に威力が増すわけでもなく、どのフォーメーションでも2トップへ直接的にパスを入れて何とかしてもらう攻め方なのだ。しかし、スアレスとカバーニの2人が傑出しているので、シンプルな攻撃でも1点ぐらいはとれてしまう。
もう1つの武器はセットプレー。アトレティコ・マドリーのチームメートでもあるゴディン、ヒメネスはCKやFKのときに相手ゴール前へ進出し、得意の空中戦で点をとる。リードしたら伝統の堅守で逃げ切る。
人口、面積で飛び抜けた巨大国であるブラジルにいかに対抗するか。コパアメリカはブラジル対周辺国という構図がある。その筆頭格であるウルグアイは、守備を磨いて一撃必殺のカウンターでブラジルに対抗してきた。攻撃力もついてきたとはいえ、いざとなればベタベタに引いて守り、少ないチャンスをストライカーの個人技とセットプレーで生かそうとするはずだ。ベシーノ、ラクサールを負傷で欠いたのは痛いが、自分たちのスタイルにある種開き直った自信を持ち、どっしりと重厚感のある攻守は相変わらずである。(西部謙司=スポーツライター)