【コラム】西部謙司
日本代表・第三形態
2021年10月21日 07:30
サッカー
プレスの際には外側で相手のサイドバックがフリーになっているので、FWが外へのコースを遮断するわけだが、相手も当然そこを狙ってくる。日本の失点はFKからだったが、そのFKを与えるきっかけは外でフリーの選手につながれ、そこからカバーが後手になって持ち込まれ、最終的にファウルで止めたものだった。陣形をコンパクトにできていなかったのでカバーリングが後手になっていた。
失点につながった場面のように、いくつか粗はある。ただ、ほぼぶっつけでやって勝利に結びつけられたのだから、とりあえず成功といっていいと思う。
懸念されるのは、ここから進歩しないのではないかということだ。
森保一監督が就任したとき、日本代表は上々のスタートを切っている。中島翔哉、南野拓実、堂安律の2列目が躍動していた。しかし、やがて所属クラブで出場機会を失った中島がフェードアウトして、この第一形態の4-2-3-1は終了する。
第二形態は今年の韓国との強化試合に快勝したチームだ。トップ下に鎌田大地、右サイドハーフに伊東純也が台頭し、南野は左サイドにポジションを変えている。こちらの4-2-3-1は第一形態より強度があり、素早い攻守の切り替えが強みだった。しかし、こちらもサウジアラビア戦で終息したとみていいだろう。
第一形態、第二形態とも、最初の段階が最も良かった。普通は時間の経過とともに熟成されていくものだが、森保監督下のチームはどういうわけか劣化してしまうのだ。
どんなシステムにも長所と弱点がある。第一形態ではフリーダムな中島が守備に入れない問題があった。第二形態ではコンディションが整わない、プレーのテンポを上手く変えられずに消耗する、相手の陣形変化に対応が遅いという課題があった。
そして、いずれも課題を解決することなく違う形態に移行した。この流れからすれば、今回の第三形態も課題が浮き彫りになり、対戦相手にそこを狙われた時点で終了するのではないかと思う。
予選は待ったなしの状況だ。代表チームにはほとんど練習時間がなく、課題を解決するのは難しい。だから、行き詰まったら形を変えるというのはたぶん正解なのだ。フランス代表もそれでネーションズリーグを制していた。ただ、何が問題でどうすれば解決できたのかは、技術委員会を中心に歴史の記憶として残しておくべきだろう。(西部謙司=スポーツライター)