【コラム】西部謙司
均質性と多様性 それぞれの強みと弱点
2018年07月25日 23:00
サッカー
ロシアワールドカップの日本代表は「日本らしい」プレーができていた。長く、どうプレーすべきか迷っていたけれども、選手間のコンセンサスは短期間でも容易に形成できたようだ。例えば、いつ速攻を仕掛けるか、いつやめるか。外国人監督の基準に従っているときはスムーズにできなかったことが、日本人の基準に下ろしてしまえば簡単にできた。チームとして統一感のあるプレーをするためには均質性は都合がいい。
多様なチームには文字どおり多様な才能を取り込めるメリットがある。優勝したフランスはその典型だった。高さと強さのあるジルーがいて、速いエムバペがいる。走って守備が上手いカンテ、パワフルで技巧的なポグバ。バラバラの個性をそれぞれに発揮した結果、攻めても守っても強く、言い方を変えるとつかみどころのない何にも特化していないチームだった。バラバラなので統一はされていないが、一体感を出せたのはディディエ・デシャン監督の手腕だろう。
均質型の弱点は、ある程度までは安定したプレーで勝てるけれども、それ以上にはなかなか強くなりにくいところだ。均質的なので勝ちパターンも負けパターンもはっきりしている。スウェーデンは堅守だが点をとれない。高さ以外の武器もあまりない。逆に、日本は押し込まれて高さ勝負に持ち込まれると苦しい。つまり、日本は「日本らしい」ことに安住していては伸びていけない。土台を大事にしながらも、自分たちが現状で持っていないものに取り組んでいかなければならないわけだ。
多様型の弱点はまとまらないこと。多様な個性を均質的に縛るのは得策ではなく、それをやってもまず上手くいかない。型にはめずにまとめる。2010年に失敗したフランスはロシアW杯では上手くやっていた。ブラジルも年季が入っている。均質型から多様型に変化したチームが要注意。最初はいいが、途中で必ず出てくるひずみとどう向き合うか。今、ドイツがメスト・エジルの一件で揉めている。ベルギーやイングランドも、多様性ゆえの難しさにこれから直面するかもしれない。(西部謙司=スポーツライター)