【コラム】西部謙司
潮目が変わったサウジアラビア戦
2016年11月18日 08:00
サッカー
引き分けたオーストラリア戦も「らしい 」と言えばそうなのだが、負けないことがメーンの戦いは、どうしても選手やファンを納得させられない。サウジアラビア戦はシンプルに勝利するための戦いであり、実際に勝てたので監督の求心力は回復するだろうし、ファンやメディアの反応も変わってくるはずだ。大迫などの新戦力の台頭も含め、これまでとは流れが変わってきた感がある。
中盤の守備ブロックをベースとして、相手によって変化を加える戦法は「仕事感」が強く、ザッケローニ監督時代の「自分たちのサッカー」とは違う日本らしさは出ているのではないか。
ただ、オーストラリア戦の専守防衛もサウジアラビア戦のハイプレスも、探せばいろいろと粗(あら)は出てくる。アジアレベルだから何とかなっていたところもあり、課題があるのは確か。とはいえ、この相手ならば十分効果があると判断して使っていて、実際に効果的だった。このあたりも現実主義者のハリルホジッチ監督らしいところかもしれない。
懸念されるのはメンバーの多くを占める海外組の状態だ。監督は、サウジアラビア戦のメンバーが今後のベースになるかどうかについて「わからない」と言っていた。今回は活躍した清武も、セビージャで試合に出られないままなら今回の本田や香川と同じようにコンディションを落とすことになる。日常的に「国際試合」を行っている海外組の多さは、本来なら代表にとってメリットになるはずなのだが、コンスタントにプレーしている選手が少なすぎるのだ。
今回は苦しい台所事情が世代交代を推し進めたわけだが、海外組 問題はそう簡単に解決できそうもない。今後もピンチをチャンスに変えられるとはかぎらない。(西部謙司=スポーツライター)