【コラム】西部謙司
強すぎるパリ・サンジェルマン
2022年08月25日 10:30
サッカー
時を経て、PSGは実質カタールのクラブになった。そして本気で「強くなりすぎる」心配をしなければならなくなっている。
今季開幕から3戦全勝。第3節のリール戦も7-1だった。3試合で実に17得点、すべて5ゴール以上とっている。
メッシ、エンバペ、ネイマールの豪華3トップは止めようがない。1人だけでも十分脅威なのが3人もいて、しかもコンビネーションも絶妙なのだ。リーグアンどころかサッカー史上でも類を見ないぐらいの反則級3トップである。
セルヒオ・ラモスがケガから復帰して、マルキーニョス、キンペンベと組む3バックも強力。GKにはドンマルンマ、控えもケイロル・ナバスと万全。ヴェラッティ、ヴィヒーニャ、ハキム、ヌーノ・メンデスのMFも全く隙がない。
ジダン、ロナウド、フィーゴなどスターを揃えたレアル・マドリーは銀河系と呼ばれたものだが、PSGの豪華さはそれ以上であり、銀河系のレアルより守備も固い。新任のガルティエ監督は守備にも力を入れているようで、メッシ、ネイマール、エンバペの3人もそれなりに守備はしようとしている。興味深いのは、エンバペがエースという位置づけになっていることかもしれない。
3トップの中で最も守備負担の軽いCFがエンバペなのだ。ネイマールはけっこう献身的に引いている。メッシもいつもよりは守備に戻っている。エンバペが最後の守備者だ。メッシとネイマールがエンバペの引き立て役に回る光景は壮観だ。メッシとネイマールの正確無比なパス、味のあるキープやポジショニングがエンバペの桁外れのスピードを生かしていて、主役が当たり前だったベテラン2人もそれなりに新しい役割を楽しんでいるように見える。ただ、本当に強力な相手と対戦したときにCFはメッシにしたほうが守備面で確かな気もするが、国内リーグでは何の問題もなさそうである。
リーグアンでPSGの敵はいない。おそらくこれからも毎試合がショウになるだろう。問題はUEFAチャンピオンズリーグだ。昨季も期待されながら優勝を逃し、リーグアン優勝決定試合でコアサポーターはブーイングを浴びせ、試合中に退席してスタジアム外で優勝を祝うという異常な事態になった。楽々と勝利できる国内リーグと、ラウンド16以降はそう簡単にはいかないCLとのギャップがどう出るか。強すぎるゆえの慢心や準備不足が今のところ唯一の心配事だろう。(西部謙司=スポーツライター)