【コラム】西部謙司
代表らしさの変化にいかについていくか
2021年04月01日 06:00
サッカー
代表チームの作り方としては王道。今回はそのメリットが出ていた。森保監督就任時のエースだった中島翔哉はその後に所属クラブでプレー機会を減らし、柴崎岳も監督交代の影響でレギュラーポジションを確保していない。4年の強化期間は長く、その間には絶対的だった選手がそうでなくなることもある。逆に調子を上げる選手もいる。遠藤航、鎌田大地はブンデスリーガで活躍し、伊東純也はベルギーで高い評価を得るようになった。選手が入れ替わっても一定レベルのプレーは維持できる、代表らしいプレーぶりだった。
U-24はメンバーも固まっていない選考段階にしては、第1戦で得た教訓を生かして第2戦ではアルゼンチンに快勝できたのだから結果はポジティブだろう。
ヨーロッパのワールドカップ予選を見ても、代表チームのあり方は日本と変わらない。戦術的にも大きな隔たりはなく、指向するプレースタイルも似てきている。
ただ、そうなると違いを作るのは個人になる。実現しようとすることが同じなら、あとはどう表現するかの競争になるわけだ。五輪に関してはヨーロッパ勢がもともとあまり重視しておらず、南米王者のアルゼンチンはフィジカルの強さはあったが、日本がそれに慣れた第2戦では内容も優勢だった。全体にチームの完成度はさほど高くないと予想されるので、開催国でもあり日本のメダル獲得は可能性があると思う。
一方、ワールドカップに関してはベスト16まではイメージできるが、その先は難しそうだ。個の部分で上回っている強豪国に勝つのは難しいからだ。チームプレーで上回らないかぎり、強豪国と当たる可能性が高いラウンド16までになりそうである。
戦術的には代表よりクラブのほうがレベルは高い。マンチェスター・シティなど、いくつかのクラブがデジタルとすれば、代表はアナログ感が強い。しかし、いずれはデジタル化したクラブから招集された選手からなる代表もデジタル化する。そうなったとき、日本が依然としてアナログなら勝ち目はますます薄くなると予想できる。
日本もデジタル化されたクラブで活躍する海外組で代表を編成できれば、チームとしても個としても対抗できるが、そうでなければ代表チームをどうやってデジタル化するかは大きな課題になりそうだ。ヨーロッパのクラブが中堅レベルまでデジタル化されれば、日本代表も同じ土俵に立てるわけだが、それを待っているといつまでも差は埋まらないということになる。アナログ同士の競争は間もなく終わる。その後のことは「今」考えておかないと間に合わず、せっかく代表らしい代表を持てわけだが、その期間はそう長くないのかもしれない。(西部謙司=スポーツライター)