【コラム】西部謙司
A代表監督は欧州を拠点にすべき
2020年09月09日 21:00
サッカー
ロシアワールドカップの主力メンバーはほとんどが「欧州組」だった。Jリーグのクラブに所属していたのは昌子源だけだ。現在の日本代表も大半が欧州組で占められるはずだ。ヨーロッパにいる選手をヨーロッパで招集するのは選手への負荷軽減にもつながる。
今回は特別な事情があってこうしたプランが出てきたわけだが、現状を考えるとA代表の活動はヨーロッパで行うほうが理にかなっている。興行は無視できないが、スポーツ的には日本でA代表マッチをやる意味はほとんどない。国際Aマッチデーに試合日が限定されているうえ、大陸を移動しての連戦が禁じられているため、呼びたい相手を呼べなくなっている。選手のコンディション、所属クラブとの関係性、対戦相手の選定と、どれをとっても国内で強化試合をやる意味が薄い。
代表監督とスタッフはヨーロッパに常駐し、各国リーグでプレーしている代表候補選手を視察するほうが、Jリーグを見るよりもはるかに意味があるはずである。選手が所属するクラブとも密に連携ができるはずだ。五輪代表以下のカテゴリーに関してJリーグ視察は大きな意味を持つが、A代表選手の主力はほとんどがヨーロッパなのだ。
監督やスタッフの生活拠点が海外になってしまうという問題はあるが、企業の海外赴任は当たり前に行われている。それが大きな支障になるとは考えられない。現在は森保一監督が五輪代表監督を兼任しているので仕方ないとしても、次期監督からはヨーロッパを拠点に活動する方式に変えたほうがいいのではないか。
普段はナマで見る機会のない欧州組を日本へ集めて試合をすれば、ファンのためのサービスにはなるし、観客動員もそれなりに期待はできる。しかし、ヨーロッパの代表戦を見ればわかるとおり、いずれは意味のない代表戦に多くの観客が集まることもなくなってくるだろう。競技力が落ちれば人気も落ちる。代表チームは競技力第一と考えれば、選択の余地はないように思える。(西部謙司=スポーツライター)