【コラム】西部謙司
E-1日本代表の逆サプライズ
2022年07月13日 19:10
サッカー
横浜FMからは最多7人が選出されている。目下、J1の首位クラブなので選出数が多いこと自体はそれほど驚きではないが、その中にGK高丘陽平が入っていないのは意外だった。高丘は攻守ともに優れたGKで、足下の上手さだけでも試す価値はあると思っていた。代表歴のある大迫敬之や谷晃生が選ばれているのは理解できるが、リーグ戦出場ゼロの鈴木彩艶が選ばれているのも奇妙である。U-21代表から選抜しなければならないという前提があるなら鈴木の選出は理解できなくもないが、選考基準がよくわからない。
E-1はワールドカップのための強化としてとらえるのか、それともJリーグで活躍している選手たちのお披露目なのか、はたまたU-21代表選手の強化の場なのか。
ワールドカップのための新戦力の発掘ならば、鈴木優磨と高丘を外したのは理解しにくい。鈴木優磨は影響力の強い選手だけに「劇薬」と考えているのかもしれないが、試すならこれが最後のチャンスだった。ワールドカップメンバーがほぼ固まっているだろう状況を考えると、ここで試す価値があるのはチームを変えられる強いキャラクターと実力の持ち主でなければあまり意味がない。何も失うもののないE-1は絶好の機会だったと思う。
ワールドカップは関係なく、国内で最高の選手を集めてE-1を乗り切ればいいと割り切っているなら、横浜FMから7人選んだのは理解できる。この7人にGK、CB1人、左SB、CFの4つのポジションを他クラブから埋めればチームとしては機能しやすい。ただ、横浜FM中心なら高丘がいないのは不思議だ。またJでの活躍を尊重するなら、2位の鹿島から1人も選ばれていないのも違和感がある。移籍した上田綺世、どうしても選びたくないらしい鈴木優磨を除いても樋口雄大は選出されていておかしくない。野津田岳人、森島司のほうがベターという判断なのだろうか。
若手に経験を積ませるなら、細谷、藤田、満田誠のほかにもフィールドプレーヤーをもっと多く選べばいいのではないか。GK鈴木は出場するとしてもたぶん1試合だろう。
E-1を戦う目的がワールドカップ、J選抜、若手育成のうちどれを主眼にしているかがはっきりわからない。3つ混ぜた結果、選考の意図がぼやけている気がする。(西部謙司=スポーツライター)