【コラム】西部謙司
日本代表の「追試」
2023年06月08日 13:00
サッカー
3月の2試合ではボール保持にチャレンジしたものの結果はあまり芳しくなく、今回は再チャレンジになる。
現実的に次のワールドカップでも日本の戦い方は攻撃型にはならないと思う。日本よりボール保持力に優れた相手は多く、ベスト8を目指すなら日本がボールを支配するような展開は想定しにくい。相手にリードされたり、引かれたりした場合に、コスタリカ戦ようでは困るのでレベルアップはしたいわけだが、どんな相手にもボールを保持して戦うつもりはないだろう。
とはいえ、攻撃力を上げなければいけないのは確か。3月シリーズでは「偽SB」を使ったビルドアップを採用していた。
日本の攻撃は伊東純也、三笘薫のサイドアタックが最大の武器である。だから、SBをタッチラインに沿って高い位置に上げるビルドアップは得策ではない。それではウイングとポジションが重なってしまうか、伊東や三笘を中へ移動させることになるからだ。SBをボランチ化させる「偽SB」は形としては妥当といえる。それが上手くいかなかったのは選手の特徴と役割があまり合っていなかったからだ。SBに起用された菅原由勢とバングーナガンデ佳史扶はボランチと兼任するよりタッチラインを上下動するタイプ。伊藤洋輝はボランチ適性があるが、どちらかといえばCBである。
今回も偽SB適性のある選手はDFの中にはいない。ただ、MFの旗手怜央は偽SB向きだ。守田英正もできる。2人をSBに起用すれば「偽SB」は機能するかもしれない。
ウイングを張らせるためのビルドアップは「偽SB」だけではない。マンチェスター・シティが採用している「偽CB」もある。欧州でもこれをやっているのはシティぐらいだが、実は日本代表には適性のあるCBがけっこういる。今回は選外だが昨年のJ1MVPの岩田智輝はCBとボランチの兼任という意味ではうってつけ。谷口彰悟、板倉滉、伊藤洋輝もボランチの経験がある。「偽CB」のSBは低い位置に留まるので、守備力優先で相手の強力なウイングを封じ込むための人選も可能だ。
ただ、今回は「偽CB」をやるにはバックアップを選んでいないので、おそらくこれをやるつもりはないのだろう。
3月に積み残したビルドアップを改善できるかどうかは、6月の2試合ではテーマの1つとしてあげられる。(西部謙司=スポーツライター)