【コラム】西部謙司
GKがもたらす進化
2019年04月12日 14:00
サッカー
しかし、日本代表はまだそこまでいっていない。そこまでリスクを負っていないわけだが、GKの攻撃力は進歩のためのポイントだ。
ロシアワールドカップのベルギー戦を振り返ると、2-0とリードした後にベルギーが空中戦を仕掛けてきたのに耐えられなかったのが敗因だった。直接的な対策は空中戦の強化になるが、日本がボールを持ったときにキープして押し返し、敵陣でのプレーを長くしてしまえば、空中戦の脅威は軽減され、あそこまで押し込まれることもなかったのだ。GKがロングキックを連発しているようではボールキープなど覚束ない。後方から数的優位を作ってキープするには、どうしてもGKのビルドアップ能力が必要になってくる。
GKにとって最も大事なのはゴールを守る守備能力だ。攻撃力が良くても守備力が弱いのでは本末転倒になる。ただし、チームを進化させるためには守備力だけでは十分でない。マンチェスター・シティはグァルディオラ監督が就任するとイングランド代表の正GKだったジョー・ハートを放出してしまった。もっと足下の技術に優れたGKがほしかったからだ。しかし、最初のシーズンはGKやDFのミスから何度も失点し数多くのピンチを招いた。エデルソンを獲得してようやく落ち着いている。支払った代償も大きかったが、リスクをとったおかげで今日のシティになれた。
ロシア大会のゴールを守った川島永嗣、アジアカップの権田修一が総合的にファーストチョイスだったことに異論はない。ただ、そろそろもう一歩前に踏み出さないと日本代表は変われない。(西部謙司=スポーツライター)