【コラム】西部謙司【コラム】西部謙司

日本代表のリスタート

2023年03月16日 09:00

サッカー

日本代表のリスタート
<サッカー日本代表メンバー発表会見>笑顔の森保監督(撮影・西海健太郎) Photo By スポニチ
 2026年ワールドカップに向け、森保一監督が引き続き指揮を執る新たな日本代表がスタートする。
 ウルグアイ、コロンビアとの2試合に招集された26人のうち欧州クラブ所属は19人、Jリーグ所属7人。初招集は角田涼太朗、半田陸、バーグナガンデ佳史扶、中村敬斗の4人。セルティックで好調の古橋亨梧、旗手怜央が選外、カタールワールドカップでプレーしたベテラン勢(吉田麻也、長友佑都、酒井宏樹)も選ばれていない。今季のJ1でブレイク中の伊藤涼太郎の名前もなし。異論反論ありそうだが、比較的若い選手もいるし、国内で活躍している選手も入っていてバランスは悪くないと思う。

 これまでベテランが占めていた守備陣の若返りが目立つ。チームの中で発言力のある選手たちいなくなったことでパワーバランスに変化が起きるかもしれない。

 1998年ワールドカップで初優勝したフランス代表は、当初中心的存在だったのはエリック・カントナ、ジャン=ピエール・パパン、ダビド・ジノラのFW陣だった。しかし、ある時期から3人は招集外となり、代わりに発言力を強めたのはローラン・ブラン、ディディエ・デシャン、マルセル・デサイー。守備寄りの選手たちを中心に強固な守備を土台としたチームに変わっていった。

 カタール大会後、何人かの代表選手から「もっとボールを保持したプレーをしなければいけない」というような発言があった。ドイツ、スペインに勝ち、クロアチアに引き分け(PK戦で敗退)は大健闘だが、攻撃力を高めないとベスト8には届かないという実感があったのだろう。新たなスタートは攻撃力アップが焦点の1つになりそうだ。

 そうなるとポイントは2つある。

 第一に、どうやって得点するか。日本はその気になればボールは保持できる。ただ、保持するだけでは日本に敗れたドイツ、スペインの轍を踏むことになる。フィニッシュとラストパスのイメージを明確に持たずにポゼッションだけが上がるのは意外と危険なのだ。

 第二には、カタールで日本がベスト8へあと一歩まで進めたのは守備的なプレーをしていたからで、攻撃力を上げることに異論はないが攻撃的なスタイルへ変化することが果たして得策なのかどうかは疑問が残る。唯一、明確にボールを保持して攻勢だったコスタリカ戦は敗れているのだ。成功したやり方から、失敗したやり方にシフトするのは理にかなっていない。

 発言力を持つ選手が後方から前方へ移るとすると、日本代表の重心も攻撃寄りになると考えられる。ワールドカップ後にそれぞれのリーグで活躍している三笘薫、伊東純也、久保建英、堂安律、鎌田大地は、新しいチームを牽引していくだろう。当面は彼らの勢いに任せてみるのも面白い。しかし、どこかのタイミングで森保監督が適切なバランスをとる必要が出てくるのではないか。(西部謙司=スポーツライター)

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