【コラム】西部謙司
グループリーグを終えて コパ・アメリカ強豪分析 ブラジル編
2019年06月25日 11:00
サッカー
中盤はアンカーにカゼミーロ、右にアルトゥール、左にコウチーニョという位置どりだが、ブラジル伝統の5番(ボランチ)、8番(つなぎ役)、10番(攻撃的MF)という役割でみたほうがわかりやすいかもしれない。3人とも特徴を発揮して活躍しているが、10番役のコウチーニョが少し物足りない感じもある。コウチーニョ自身は良いプレーをしているのだが、ブラジルの歴代クラッキからすると大物感がない。ここにネイマールがいれば違うのだろうが、本来は左ウイングのネイマールをこのポジションに使うと、それはそれで問題はありそうである。ともあれ、攻撃的にいくならこの3人はいいバランスだ。
最もブラジルらしさを表現しているのがウイングである。最初の2試合はリシャリソンとネレスが先発だったが、3戦目はジェズスとエベルトンに代わった。エベルトンは今大会の発見といえる選手で、スピードと突破力、フィニッシュワークを兼ね備えた逸材。本来はセンターフォワードのジェズスもウイングのほうが技術と瞬発力を発揮できているように思う。後方のビルドアップ能力が高いブラジルにとって、ボールを敵陣に運ぶのは問題ない。そこから個で崩せるタレントがサイドにいるのが大きい。
センターフォワードのフィルミーノはつなぎとフィニッシュの両面で効いていて、守備も忠実にやる。UEFAチャンピオンズリーグに優勝したリバプールでは、モハメド・サラー、サディオ・マネの両ウイングとプレーしているが、ブラジルでも強力なサイドと組んで万能型の特徴を発揮している。ブラジルとリバプールではプレースタイルが違うとはいえ、ウイングに速さと巧さを備えた強力な個を配置するのは共通だ。パスワークでの崩しはサイドバックが担当してくれるので、MFには特別なアタッカーよりも攻守に秀でたタイプのほうがバランスはとれるのかもしれない。ペレ、リベリーノ、ジーコ、リバウドのような10番がいないのは寂しい気もするが、現代的であると同時に伝統も踏まえたブラジルに仕上がっている。(西部謙司=スポーツライター)