【コラム】西部謙司
モウリーニョ解任 3年目に失速 地力が頭打ち
2018年12月19日 17:40
サッカー
これまでもモウリーニョはだいたい3年目に失速している。
最初の2年は上手くいくしタイトルも獲るのに、長続きしない理由は何なのか。モウリーニョは対戦相手を徹底的に分析し、その対策をチームに落とし込むことにかけては右に出る者がないといわれている。一方で、作り上げるチームは意外とオーソドックスで何かに特化することがない。堅守速攻の印象があるが、それは強豪相手のときだけで、攻撃にも守備にも偏らない。GK、CB、MF、FWの縦軸に実力者を配し、その選手たちの能力を発揮させることで全体を動かしていく。革新的な戦術を使うわけではなく、極端なポジションのコンバートもやらない。
攻撃も守備も、カウンターもポゼッションもできる。ハイプレスも「バスを置く」守備もやる。いざというときの放り込み要員も用意している。どのような状況にも対応可能なチームを作り、そこへ綿密な対策を乗せていく。
3年目の失速は、おそらくこのチーム作りと関係がある。戦術的にはオーソドックスなのでチームは早く固まる。そのぶん早くピークが来てしまうので3年目以降は右肩上がりに進化していくことがない。対策は上手いけれども地力が頭打ちになってしまう。
2年を経過したら、大型補強を行って主力を入れ替えてしまえば鮮度は保てるかもしれないが、それにはアレックス・ファーガソンのような人事権を手に入れなければ難しい。現在のユナイテッドでそれは許されていないうえ、フロントの補強が上手くないときている。名将の失速は予想の範囲内だったといえるかもしれない。(西部謙司=スポーツライター)