【コラム】西部謙司
日本代表は「変化」にどう向き合うのか
2020年11月21日 06:00
サッカー
日本は1998年のフランス大会からワールドカップ連続出場を続けている。6大会中、3回はベスト16、3回がグループステージ敗退。自国開催だった2002年を除くと、グループステージでの日本の立場は常に3、4番目である。つまり、シード国を含む格上の相手に挑むのがワールドカップということになるわけだ。
ただ、これまでの21試合で一方的に叩きのめされた試合は06年のブラジル戦(1-4)だけだ。14年のコロンビア戦も同じスコアだが、内容はかなり違っていて日本の攻め込みは多かった。攻撃だけなら21試合中でも最高クラスで、守備の脆弱性をつかれて大差になっているが全く歯が立たないという試合ではなかった。
終盤の8分間で3失点した06年のオーストラリア戦は2点差がついたが、ほかは負けても1点差。ワールドカップの試合はおよそ接戦なのだ。これまで同様、接戦に持ち込めそうなプレーは欧州遠征でもできていた。
一方、日本の負けパターンもずっと変わっていない。相手の「変化」に弱い。
98年のクロアチア戦(0-1)、06年のオーストラリア戦(1-3)、14年のコートジボワール戦(1-2)、18年のベルギー戦(2-3)は、いずれもリードしていた試合を相手の「変化」によってひっくり返されている。
クロアチアはロングボールでのカウンターをショートカウンターに変更して日本を攻略、オーストラリアとベルギーは空中戦、コートジボワールはエース、ディディエ・ドログバの投入。いずれも相手の「変化」に対応できなかった。
圧倒的な力の差があって、どうにもならないなら仕方ないが、優勢だった試合をひっくり返されているのがもったいない。ただ、それも実力のうちなのだ。
森保一監督はずっと「対応力」を課題としてきたが、メキシコ戦でもそれを発揮できていない。2019年アジアカップ決勝のカタール戦で、相手の「変化」に対応できなかったときからあまり進歩がない。
森保監督は選手に「対応力」を求めているようだが、正直それは無理だと思う。
過去のワールドカップの試合でいえば、予想外の事態に直面して修正できたのは10年のデンマーク戦(3-1)だけだ。それも遠藤保仁という俯瞰で戦況を読める特殊な個人がいたからで、それを求めても難しい。
日本にできるのは相手の変化を想定して、対応できる「引き出し」を予め用意しておくことだろう。もし「引き出し」に答えがなければ、監督を筆頭にベンチが回答を示さなければならない。メキシコ戦のような親善試合では本来そこを問う必要はないのだが、日本の場合は選手だけでなく、ベンチも含めてのテストをしておく必要がある。(西部謙司=スポーツライター)