【コラム】西部謙司
48チームのワールドカップ
2017年01月20日 14:30
サッカー
もちろん番狂わせはつきものである。優勝候補が早々に姿を消す例は、過去にいくつもあった。しかし、20回の大会で優勝したのは8チームにすぎない。そのうちイングランドとフランスは自国開催の1回優勝のみ。ウルグアイは2回優勝しているが、2回目は1950年とずいぶん前のことだ。結局、最多5回優勝のブラジル、4回のドイツとイタリア、この3カ国で優勝の65%を占めている。これにアルゼンチン、スペイン、フランスなどを合わせても、現実的に優勝を狙えるのはせいぜい10チーム程度だろう。
FIFAは2028年大会から参加チームを現行の32から48へ拡大する。世界一とは関係ないチームが40ぐらい参加することになるわけだ。ただ、五輪ではないがワールドカップも参加することに意義はある。たとえ優勝の可能性が皆無であっても、ワールドカップに出場することで、その国のサッカー熱は上がる。それによって底上げが図られ、やがてアジアやアフリカからも世界一を本気で狙えるチームが出てくるかもしれない。
「サッカーはヨーロッパと南米のためだけにあるのではなく、もっとグローバルであるべきだ」
FIFAの言い分は正論に聞こえる。しかし、アフリカやアジアの出場枠を増やし続けても、いまのところヨーロッパや南米の牙城が揺らいだわけではない。グローバルというなら、大陸の枠を外して全世界的な予選を行ってベストの48チームに絞り込めばいいのだ。加盟数が多いというだけでアフリカやアジアの出場枠を増やすのは、競争という意味では不公平である。
ワールドカップのレベルダウンを懸念する声があるわけだが、FIFAはもともとそんなことは大して気にしていない。収益の増大と普及こそが彼らの正義だからだ。平たくいえば金と票(多くの加盟国からのFIFAへの支持)である。汚職問題で幹部が去った後でも、FIFAの方針は首尾一貫している。(西部謙司=スポーツライター)