【コラム】西部謙司
ベルギー戦の敗因 今後の長期的な見通しは!?
2018年07月04日 22:00
サッカー
ベルギーの最大の武器はカウンターアタックである。ルカク、アザールなど速くて個で勝負できるタレントが多い。カウンターができないときはデブルイネ、ヴィツェルを中心としたパスワークから攻める。さらにアザールやカラスコのドリブルで強引にこじ開ける、ミドル連発と攻め手はあるが、それでもダメなら最後はフェライニを出してハイクロスの雨を降らせる。つまり、日本はそこまでベルギーを追い込んでいたわけだ。
巨体のルカク、フェライニがいて、セットプレーなどでは長身のDFコンパニらもゴール前に来る。日本でなくてもベルギーの高さに対抗するのは簡単ではない。吉田、昌子を中心に日本はよく耐えていたが、やはり差は歴然としてあった。
ただ、選手の身長を急にのばすことはできない。センターバックやGKのサイズアップは遺伝子の問題ともいえる。実際、外国人の血筋を持つ若い選手が日本でも台頭しつつある。世界的には黒人選手のパワーやスピードで課題を解決した国は多く、ベルギーもそうだがフランス、ブラジル、ポルトガル、最近ではイングランドもすっかり黒人選手が増えた。人種の多様化がプラスに働いている。しかし、日本はまだそこまで多様化はしていない。時間が必要だ。
フェライニ投入まで、日本はベルギーの攻撃をミドルゾーンのコンパクトな守備で迎撃できていた。自陣深く押し込まれたので空爆されたので、ミドルゾーンの守備を維持できる「スタミナ」があれば高さ不足は露呈しなかったかもしれない。
あるいはハイクロスで押し込まれたとしても、自分たちのボールになったときにキープして押し返し、「技術」を使って時間を消費してリズムを断ち切ってしまえば3点もとられずに済んだかもしれない。
だからベルギー戦の直接的な敗因は「高さ」だが、「スタミナ」や「技術」があれば補えたともいえる。しかし、大会の反省としてこうした個々の事象に焦点を当てるべきではない。まず、日本がどうプレーすべきかの総合的な観点がなければいけない。毎回ベルギーと対戦するとは限らないのだ。それには技術委員会が今後の長期的な見通しを出すこと。どんなプレーをするのか、そのための強化や育成をどうするのか。監督の選定はそれからで、そこを省略してしまうと和食を食べたいのにイタリアンのシェフを招聘するようなことになりかねない。(西部謙司=スポーツライター)