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2024年 弱肉強食の荒野への第一歩

2024年01月03日 10:00

サッカー

2024年 弱肉強食の荒野への第一歩
Jリーグのシーズン移行比較 Photo By スポニチ
 Jリーグの秋春制へのシーズン移行が決定。施行されるのは2026-27シーズンからなのでまだ時間はあるものの、2024年はJリーグと日本サッカー界が新たな一歩を踏み出した年として記憶されるかもしれない。
 シーズン移行のメリット、デメリットについてはこれまでも議論されてきた。ただ、降雪地帯をどうするかという課題に回答が出ない以上、シーズン移行は無理筋だろうと思っていた。今回、その一線を越えたのは新たに画期的なアイデアが出てきたからではない。おそらく、野々村芳和チェアマンの次の言葉がほぼすべてなのだと思う。

 「Jリーグを世界と戦う舞台に変えていく」(野々村チェアマン)

 Jリーグのチームは世界トップクラスとも戦える実力をすでに持っている。例えば、夏の親善試合でマンチェスター・シティーやバイエルン・ミュンヘンに対して、横浜F・マリノス、川崎フロンターレが健闘していた。欧州勢はシーズン前、Jリーグ勢はシーズン中というコンディションに差がある対戦。コンディションで有利なJクラブは戦術面、技術面でも欧州トップクラブに見劣りしていなかった。逆にいえば、欧州とJの決定的な差とは身体能力の違いなのだ。

 では、その差を埋めることはできるのかというと現状では不可能である。すでに完成されているプロ選手の身体能力を上げていくのは限度がある。欧州強豪クラブは、より身体能力の高い選手を獲得して上位互換することで強さを維持しているわけだが、その選手獲得競争でJクラブは欧州勢に全く太刀打ちできない。サウジアラビアにも勝てない。なぜなら資金力に大きな差があるからだ。

 Jリーグを欧州と伍するようなリーグにしたければ、最も必要なのは資金であり、いかに金を稼ぐかが明白な課題となる。

 資金についてJリーグは明確な説明をしていないけれども、サッカーの本場である先進国である欧州のやり方を踏襲し、同じ土俵で勝負することになるはずだ。つまり、弱肉強食方式である。

 欧州サッカーは市場の拡大を行い、それによって得た莫大な利益を、ビッグクラブと呼ばれる全体からすればごく少数のクラブに還元して発展してきた。さらにそのための原資は中東の金であり、UAE、サウジアラビア、カタールのお金で欧州サッカーは成り立っている。

 中東諸国はJリーグには興味がないだろうから、投資元として期待できるのは中国と米国だと思う。GDPのトップ3が組むことで欧州&中東にはじめて対抗できる資金、人材、環境を揃えられるのではないか。Jリーグがどこまで本気で考えているかはわからないが、現在世界トップにいる欧州サッカーに勝つというのは、こうしたマネーゲームの勝者になることを意味するはずなのだ。

 Jリーグは発足当時の護送船団方式とも地域密着からも離れ、弱肉強食の荒野へ踏み出していく。シーズン移行は、そのスタートだったと後で気づくのだろう。(西部謙司=スポーツライター)

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