【コラム】西部謙司
ハリルホジッチ監督解任論について
2017年12月21日 16:50
サッカー
なぜ、ハリルホジッチ監督が解任されないかというと現状で協会に代案がないと思うからだ。ハリルホジッチでなければ誰を監督にするのか、その監督が短期間でチームを作り直してワールドカップでの成果を出せると期待する根拠は何か、それを明示できなければ監督交代には踏み切れない。ハリルホジッチ監督にはアルジェリアをベスト16に導いた実績があり、これを上回るカードを協会が持っているとは思えない。
また、E−1の1試合に負けただけで解任するのはあまりにも理不尽である。この内容と結果ではワールドカップで到底良い成績を望めないと考えるなら解任するという手もあるが、E−1の日本代表がその ままワールドカップに行くわけでもないから、E−1を判定基準にするのは無理がありすぎるのだ。
予選を通過している監督を現段階でダメという理由がない。ブラジル、ベルギーとの親善試合を見るかぎり、全くダメだという判断にはならないだろう。ワールドカップで厳しい戦いが予想されるのは誰が監督でもそう変わらない。
協会が解任するとすれば、現時点では監督の求心力が著しく低下していてチームを統括できないと判断するケースしかないが、そこまでの状況に至っているようにも見えない。
もう1つ、協会の強化方針と全く一致しないので解任するというケースがあるが、これは日本サッカー協会の場合はありえない。なぜなら協会に明確な強化方針がないからだ。日本代表の強化方 針は実質的にそのときどきの代表監督が決め、技術員会はそれを追認してきた。雇った以上は全力でバックアップする。そもそも契約する前の方針が協会側にないので、「あなたと我々の方針は違いすぎる、日本の将来につながるとは考えないので一緒にやれない」と言える人は誰もいない。だったらなぜ契約したのかという話でもある。日本協会の強化方針はある種の勝利至上主義なので、結果が出るまでは誰も何も判断しない。もちろん気に入らない点はいろいろ文句も出てくるだろうが、協会として「このサッカーは良くない」という理由で解任できる仕組みになっていないのだ。
結果が悪く、求心力が落ちきる前に「流れを変えたい」という理由で一度だけ更迭したことがあるだけで、協会が代表監督を 解任した例も近年にはない。(西部謙司=スポーツライター)