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「俺が国体に連れて行く」履正社エースが誓った約束 故障から再結成目指した「3本柱」の絆と成長

2023年08月19日 07:45

野球

「俺が国体に連れて行く」履正社エースが誓った約束 故障から再結成目指した「3本柱」の絆と成長
履正社・増田の帽子のつばに書かれた「綺」と、今仲の帽子のつばに書かれた「麗」の文字 Photo By スポニチ
 今夏、高校野球の履正社は、左のダブルエースを武器に戦った。背番1で制球自慢の増田壮と最速151キロを誇る福田幸之介(ともに3年)の両左腕のことである。2人が軸となって大阪大会で大阪桐蔭を下して優勝し、甲子園で2勝を挙げた。ただし今夏の躍進は、最後の夏にスポットライトの当たることのなかった右のエース・今仲巧(3年)抜きでは語れない。
 入学直後から「右の今仲」「左の増田」が同学年の投手陣を引っ張ってきた。今仲は「僕たちは、ずっと仲良し。だけど練習中だけはピリピリしていました」と苦笑いする。1年秋に背番号1を与えられた増田がダッシュを1本走れば、今仲と福田は2本走った。今ではプロ注目左腕にまで評価を上げた福田は「1年生のときから増田や今仲という超えるべき存在がいたからこそ成長できた」と感謝する。

 福田がエース背番を背負った今春選抜は初戦で敗れた。この敗戦を機に3人は、早朝練習を毎日行うようになる。今仲が「投手の朝練は自由参加だけど、僕と増田、福田の3人は必ず行くようにしました。俺たちに付いてこいという気持ちでした」と言うように3人1組となって切磋琢磨してきた。

 しかし、夏目前で今仲が右肩を痛めた。1年夏からベンチ入りしてきた右腕が3年夏にベンチ入りから外れることになったのだ。背番1を与えられた増田は、今仲に伝えた。「俺に任せろ。俺が国体に連れて行く」。この言葉を信じ、今仲は決して練習量を落とさなかった。

 選抜大会前、3人は帽子のつばに漢字一字を書くことにした。増田が「綺」、今仲は「麗」を選び、達筆の福田が代筆した。2つを合わせれば「綺麗」となる。今仲いわく「きれいで美しい姿を見せるのが投手の理想」との思いを込めたと言う。夏の甲子園3回戦、昨夏王者の仙台育英に左腕2人が挑んだ。3―4で敗れたとはいえ、強力打線に真っ向勝負を続ける姿は美しかった。

 試合後、増田は「1人でずっと投げられる環境なら、こんなに真剣になることはなかった。同い年に凄い投手がいてくれたことが成長につながりました」と言った。きっとこれからも3人は、心底認め合える戦友であり、最も負けたくないライバルであり続ける。(記者コラム・河合 洋介)

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