永六輔さんの孫・岡﨑育之介氏「死に様見せてくれた祖母と祖父のために」 クリエイターとしての矜持

2024年02月29日 13:06

芸能

永六輔さんの孫・岡﨑育之介氏「死に様見せてくれた祖母と祖父のために」 クリエイターとしての矜持
映画「うぉっしゅ」でメガホンを取った岡﨑育之介監督 Photo By スポニチ
 日本の放送業界の草創期を支えた永六輔さん(享年83歳)の孫で、脚本家・演出家など幅広く活躍する岡﨑育之介氏(30)が監督を務めた映画「うぉっしゅ」が「第19回大阪アジアン映画祭」で3月1日に上映される。シネ・リーブル梅田で世界プレミアを迎える作品の上映後には、ダブル主演した研ナオコ、中尾有伽と共に舞台あいさつを予定。岡﨑氏に意気込みを聞いた。(西村 綾乃)
 斬新な作品を集めた「インディ・フォーラム部門」に選ばれた映画は、ソープ嬢として働く孫(中尾有伽)が、認知症になった祖母(研ナオコ)を介護する物語。性と認知症。交わらないように見えるが、5年前、83歳で仕事に区切りを付けた後、認知症になった父方の祖母(88)と面会する約束を岡﨑氏が破ってしまった経験がふたつをつなげた。

 「認知症になった祖母が僕を覚えていないんじゃなく、僕がどうでもよくなってしまったんじゃないか」。自責の念は、社会の中心から外れた者が抱える「孤独」を浮き彫りにした。

 介護用品として考案された股間部分がくぼんだイスが、性の現場で使用されていることにも着目。劇中では、真剣な表情で祖母を、妖艶なまなざしで客を洗う別世界をコミカルに描いている。

 自身2作目となる長編映画。「見終えた後、孫に連絡しよう、おばあちゃんに会いに行こうとか、アクションしてくれたらうれしい」と思いを込めている。

 18歳で俳優デビュー。役者として研さんを積み、24歳から作り手へと活動を広げた。

 初監督した「安楽死のススメ」では、自死を望む男性を笑いを交えて描いた。死や生に意識が向くのは、2002年に亡くなった母方の祖母と、16年に後を追うように旅立った永さんの存在が大きいという。

 「(母方の)祖母は僕が8歳の時に余命2カ月と宣告されました。分かったときには末期の胃がんで、あっという間に死を迎えて」

 死が何かを理解できていなかった幼少期。火葬の際、気丈な母が父の胸に顔を埋め、泣き崩れるのを見た。68歳で最愛の妻を亡くした祖父は、晩年にパーキンソン病と前立腺がんを発症。岡﨑氏が22歳の時に帰らぬ人となった。

 「祖父を超えたい」とまい進してきた芸能の道。「亡くなったことで伝説のような存在になってしまった」とうろたえた。しかし「死に様を見せてくれた祖母と祖父のため、僕がやらなきゃ!」と発起。クリエイターとして生きると決意した。

 歯に衣(きぬ)着せぬ発言で、多くの人の心をつかんだ祖父のように。自らの発信力を強め「芸能界の純度を高めたい」と目を輝かせた。

◆岡﨑育之介(おかざき・いくのすけ)1993年(平成5)10月31日、東京都生まれ。18歳で俳優デビュー。映画やドラマ、舞台で活躍。現在は脚本家、演出家、監督として活動している。

この記事のフォト

おすすめテーマ

2024年02月29日のニュース

特集

芸能のランキング

【楽天】オススメアイテム