【内田雅也の追球】「最悪想定」の決勝打 マイナス思考から勝利に近づくプレーは生まれる

2023年07月24日 08:00

野球

【内田雅也の追球】「最悪想定」の決勝打 マイナス思考から勝利に近づくプレーは生まれる
<ヤ・神>3回、同点となる右適時二塁打を放った木浪(撮影・岸 良祐) Photo By スポニチ
 【セ・リーグ   阪神4―2ヤクルト ( 2023年7月23日    神宮 )】 1―1同点の7回表1死二、三塁、阪神の代打・渡辺諒は右方向への打撃を意識していたのではないだろうか。
 ヤクルトの投手は2番手の大西広樹。内角へのシュートとフォークが得意の右腕だ。

 もちろん安打が打てればいいが、打てずとも内角シュートに詰まったり、フォークを空振りしたりしては何も事は起こらない。最悪である。

 前に打球が飛び、三塁走者を還すためにはどうするか。右方向へ打つ意識を持てば、空振りを回避し、ゴロの場合、本塁上で捕手のタッチが遠くなる。つまり、最悪を回避することができる。

 だから、初球内角シュートを見送った2球目、同じ内角シュートにも詰まったり、引っかけたりすることなく、一塁へゴロを転がせたのだ。打球はやや不規則バウンドしたのか、一塁手ホセ・オスナが捕球に戸惑い、「ゴロゴー」でスタートを切っていた三塁走者・森下翔太は生還できた。

 凡ゴロではあるが勝ち越し点をたたき出す決勝打だった。
 最悪を想定した上での打撃だった。まるで「最悪を想定したうえで戦略を組み立てる」という自称「マイナス思考」の監督・岡田彰布の精神が乗り移ったかのようだ。

 これまでも書いてきたように、岡田は「あわよくば」という姿勢を嫌う。「運が良ければ」という楽観的な考え方では、勝負の世界を勝ち抜けないという。

 選手たちも、まず最悪を頭に入れたうえで、どうするかを考えていけば、成功や勝利に近づくプレーができるのではないだろうか。

 同じことは3回表の同点でも言えた。無死二塁。木浪聖也は「悪くても走者を進め、将司(伊藤)に回そうと思っていた」と、引っ張っての進塁打を意識していた。だから外角低めに落ちていくフォークにも泳ぎながら右中間へ適時二塁打を打てたのである。

 同じ無死二塁で打席に立った4回表の佐藤輝明はどうか。外角攻めに対し苦労し、最後は胸元直球で空振り三振を喫した。最悪の結果だった。

 ただし、佐藤輝は自由に振り、時にとんでもない快打を放つ魅力がある。8回表1死一、二塁、今度は外角球を狙いすましたように左中間二塁打して見せた。前の打席の反省をいかしたのだ。

 「最悪」を経験すれば「最悪」を避ける姿勢も身につくのだろう。=敬称略=(編集委員)

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