旧唐津銀行と同じ明治時代の38年(1905)に建てられたのが、唐津駅から徒歩約15分の国指定重要文化財「旧高取邸」だ。杵島炭鉱(佐賀県)などの経営で成功し、「肥前の炭鉱王」と呼ばれた高取伊好(これよし)の邸宅。約2300坪の広大な敷地に、居室棟と迎賓館的な役割の大広間棟(計約480坪)が建っており、壁に映し出される影まで計算された欄間や、29種72枚もの杉戸絵、アールヌーボー調のランプなど、近代和風建築の技術の粋が尽くされている。
中でも大広間棟には、座敷に設けられたものとしては極めて珍しい能舞台が現存しており、同邸が2006年に公開されてからこれまでに3度の公演を実施。2階大広間の格子戸越しには頂上が平らな高島が浮かぶ唐津湾が一望でき、庭園だけでなく絶景まで借景としており、まるで美術館のようだった。入館料520円。(電)0955(75)0289。