阪神・今岡コーチが戦力外の高山に贈った“はなむけ” 自身の境遇と重ね出た行動とは

2024年03月06日 08:00

野球

阪神・今岡コーチが戦力外の高山に贈った“はなむけ” 自身の境遇と重ね出た行動とは
<コナミコーチ用><阪神宜野座キャンプ> 阪神・今岡真訪打撃コーチ(撮影・岸 良祐)
 【畑野理之の談々畑】オープン戦が降雨中止となり、阪神の室内練習場でのフリー打撃を眺めていると、今岡真訪打撃コーチがいつものように打撃ケージの後ろでジッと立っているのが見えた。ほとんど動かない。沖縄の春季キャンプもそうだった。近本光司とよく話をしていたが、その他の選手を指導するのを見るのは少ない。この日も声を掛けたりはしていなかった。
 仕事をしていないじゃないかと言うのは正しくない。一方的に教えるだけが指導のやり方ではない。1軍か2軍かなど選手の立場によってテーマも違う。見ることも方法論の一つ。選手の長所や修正点を知り、調子の良しあしなど現状を把握する。かねて「僕は本当は教え魔なんですよ」と自己分析するが、1軍打撃コーチの今岡スタイルは、聞いてきたら説明する…なのだ。

 岡田彰布監督も、選手とあまり直接に話をせず、コーチや報道を通じてコミュニケーションを取る。今岡コーチが現役時代、結果が出ずに降格した時に当時の岡田2軍監督から多くのことを学んだ。時には消沈していた心を励ましてもらった。後年、首位打者や打点王を獲れたのは岡田監督がどん底で救ってくれたおかげでもある。22年オフにコーチで招へいされ、その岡田野球を選手に伝える立場になった。いま、やり方が似ているのは自然の流れだ。

 昨年11月上旬、阪神を戦力外になっていた高山俊が鳴尾浜で1本のバットを握りしめていた。11月15日のトライアウト受験前で、「今岡さんから連絡をいただいて、今から甲子園室内でバッティングを見てもらうんです。きょうで3回目ですが、気にしてもらって感謝しかありません」と話していた。今岡コーチが阪神コーチ(2軍)1年目だった16年、高山も新人だった。新人王から、その後の苦しむ姿も見ている。ともにドラフト1位で阪神に入団するなど境遇が近いから気になるのだろう。

 「彼は(23年の)春季キャンプが勝負だったんですけど何も変えてあげることができなくて。それからもあまり会えなくて、秋に戦力外通告を受けてからスーツを着た彼からあいさつを受けて、野球を続けると聞いたのでね。でも最初に言ったんですよ。“オレは次、どこでプレーするかは興味がない。ただ、お前の心の中にずっとあるモヤモヤを取り除きたいから”って」

 今岡コーチも阪神を戦力外通告となった09年オフにトライアウトを受けて、翌10年のロッテの春季キャンプにテスト生として参加して合格している。「新天地では今まで見えていなかったものが、きっと見えてくると思うんです」。高山が今オイシックス新潟でプレーしているのをYouTubeで時々見ているという。今岡コーチが教え好きなのは本当だと思った。

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