【王将戦】藤井王将「慎重に考える局面」 駒交換なしの静寂の盤面 千日手の可能性
2024年01月08日 05:30
芸能
藤井の44手目△7四飛(第1図)に菅井が▲6七銀と退却。23手目▲5六銀と敵陣へ圧力を加えた攻め駒の方針転換に、先手陣の動きにくさを感じ取ったという。
王将戦では、1日目午後4時までに千日手になれば同日指し直す。4時を過ぎれば封じ手時刻6時までの残り時間を折半して双方に加算し、2日目に指し直す。棋戦ごとに異なる規定に沿った運営は、立会人の任務だった。
対戦成績は藤井の9勝4敗、4度の千日手があった。昨春の叡王戦では、藤井が2勝1敗で獲得へ王手をかけた第4局で2度現れた。両者の対局で千日手が起きやすい理由を、副立会人の松本佳介七段は「相穴熊は動かす駒がなくなりやすいため」と解説。今回同様、堅陣を一層固め合っても発展性がなくなってしまう。
第1局注目の振り駒は、と金が3枚出た。歩5枚を投じ、歩が多く出れば上位者の先手、と金なら下位者の先手。「開幕局は大事だと思う。緊張感がある」。前日にそう語った藤井は、その理由に振り駒を挙げていた。
「先手後手が直前まで分からない。シリーズに少なからず影響するかなと思う」。先後によって戦型選択、主導権の握りやすさが決まる。第1局で定まった先後を繰り返す、第2局以降とは違う開幕局の重みを指摘した。
言葉を裏付けるかのように、後手番での第1局は苦戦する。20年棋聖戦以降、19度のタイトル戦全勝を誇るが、3勝2敗。デビュー以来170勝47敗(未放映のテレビ対局を除く)、・783の勝率がある藤井の後手番。2割近く劣る数字はサンプル数こそ少ないとはいえ、死角と言えた。
「駒が一度ぶつかってしまえば激しくなります。慎重に考える必要がある局面です」
封じ手まで駒はぶつからず、交換もない異例の展開。千日手の可能性は依然消えない。勝率上、若干劣る後手番の藤井は千日手を受け入れやすいが、視線は敵陣の突破へ向くのかもしれない。封じ手開封から局面が動く可能性はある。(筒崎 嘉一)