「ブギウギ」喜劇と歌の融合 趣里のコメディエンヌぶり
2024年01月19日 08:21
芸能
スズ子のモデルとなった歌手の笠置シヅ子さんは終戦後、「喜劇王」と言われたエノケンこと榎本健一さんと舞台や映画で共演している。
福岡氏は「エノケンさんと笠置さんが共演した舞台のあらすじが残っていました。そのあらすじを基に、エノケンさんの舞台をいろいろ拝見した上で想像してあのシーンを作りました。長いシーンではなく、ダイジェスト的、象徴的なものにしました」と説明する。
あの舞台でスズ子が歌った「コペカチータ」は笠置さんが当時実際に歌っていた曲。作ったのは羽鳥善一(草なぎ剛)のモデルとなった作曲家の服部良一さんだ。これまでスズ子が劇中で披露した「ラッパと娘」「大空の弟」などとは異なり、喜劇からの流れで歌い出す。喜劇と歌の融合だ。
福岡氏は「『コペカチータ』は不思議で面白い歌です。服部良一さんのユーモアも含め新しいことをやっていこうという思いが感じられ私自身も好きです。あのシーンはまず舞台での喜劇を撮ってそれからスズ子の歌を撮りました。『コペカチータ』が変わった歌なのでシュールな舞台になりました」と振りかえる。
歌唱シーンでは途中でタナケンが登場して踊りを披露する。
福岡氏は「あの踊りはおちゃめで面白かった。生瀬さんは当初『踊りたくない。歌と踊りは勘弁してほしい』とおっしゃっていましたが、撮影では乗り乗りでした。帽子の場面はアドリブだと思います。台本の狙いをご自身に落とし込んでいただき、表情の作り方を含め、300点のお芝居をしていただきました」とたたえる。
喜劇のシーンでは趣里のコメディエンヌぶりも光った。
福岡氏は「舞台上での表情の面白さもさることながら、黙り込むタナケンに『言わんのかい!』と突っ込む時の間が良かった。『コペカチータ』の歌唱が決まるシーン(1月15日放送の第72回)で、タナケンが『別にいいんじゃない』と言い、善一が『よし決まりだ』と言った後、スズ子が『別に、て』と突っ込むところも面白かった。タナケンと善一に温度差がある中で2人の雰囲気に引っ張られることなく的確に自分の突っ込みを入れられるのは趣里さんの技だと思います」と指摘する。
笠置さんはエノケンとの共演後、山本嘉次郎監督の映画「春の饗宴」(1947年)や黒澤明監督の映画「酔いどれ天使」(48年)に出演するなど俳優としても活躍した。その史実からすれば、今後はスズ子の役者ぶりもこのドラマの見どころになるに違いない。
◆牧 元一(まき・もとかず) スポーツニッポン新聞社編集局文化社会部専門委員。テレビやラジオ、音楽、釣りなどを担当。