【男優主演賞】鈴木亮平 「責任」さらなる高みへ 天国の原作者によくやったと言われるように
2024年01月19日 05:00
芸能
「とても光栄ですし、何より氷魚くんと同時というのが凄くうれしかったです。二人で一つみたいな感じで、氷魚くんじゃなかったら別の表現になっていたでしょうし、お互いに高め合って自分の力以上のものが出せた気がします」
エッセイストの高山真さんの自伝的小説が原作。ゲイとして生きる浩輔がシングルマザーの母親を支えながら暮らす龍太との恋に幸せを見いだしていく。
「一番大きなテーマは同性愛ではなく、広い意味での愛や人間の美しさを描いた映画。ただ、主人公のアイデンティティーがマイノリティーで、それを当事者ではない俳優が演じるには並々ならぬ責任を持たなければいけない。ゲイの方々、ひいては性的マイノリティーの方々が生きづらい社会を助長してしまう表現を一つでもしてしまうと作る意味がないと思いました」
徹底した役へのリサーチには定評があるが、モデルである高山さんは20年に他界。本人に聞けない難しさを自覚しつつ、「言葉の選び方に天才的なセンスがある」と畏敬の念を込め、小説の行間まで読み込んだ。周囲にも丹念に取材を重ね、浩輔像を体に染み込ませていった。
「高山さんが根幹の部分でどう感じていたか、どういう苦しみを持っていたかは正確に捉えたかった。天国から見てくださった時に、よくやった、と言われるようにしなければいけない」
その上で助けとなったのが初共演だった宮沢の存在。「真面目で純粋に表現に向き合い、龍太と重なるピュアな部分もある方で、何の努力もなく自然に愛していけました。物凄くいい相性だったんだと、いまだに思います」と相好を崩す。
昨年、不惑を迎え芝居への意識にも変化が芽生えたという。「もっと人(役)としてその場に存在し、それがどうエンターテインメントになっていくのかを純粋に突き詰めたい。自分の感覚で明らかにこの表現はノーだというものがあった時にはきちんと責任を持って意見を言うようにしていきたいという意識が強くなった気がします」
そう語る強いまなざしは、さらなる高みを見据えていた。